この11月18日、IRサイト向けソフト大手のQ4ウェブシステム(本社カナダ・トロント)は「公開企業とツイッターのIR活用」という調査を発表した。ツイッター(英文)にアカウントを開設している北米の公開企業は350社(09年8月時点の調査で80社)で、この3カ月の間に270社も増大した。約4.4倍増だ。このうちIR活動に利用している企業は43社増の87社(同44社)で、ほぼ倍増となった。
この87社はどのようにツイッターを活用しているのだろう。それぞれ自社サイトにリンクしている。なかでも「決算発表リリースにリンク」という企業が53%を占め、いちばん多い。次いで「決算発表リリースと電話会議のお知らせにリンク」の18%、そして「決算発表リリースと電話会議、ウェブキャストのお知らせにリンク」(8%)が続く。業種別にみると、テクノロジー部門が最も多く29%。次にサービス部門の15%。工業製品・基礎素材部門と薬品・ヘルスケア・バイオテクノロジー部門がそれぞれ12%で上位を占めた。
では、自社のウェブサイトからツイッターへのリンクはどうなのだろう。39%がツイッターへのリンクを掲載し、そのうち32%はどのページからもリンクがあり、同じく28%がニュース/プレス関係のページからリンクを用意しているという。
今回の調査結果を国別で見てみる。英文ツイッターの調査ということもあるだろうが、米国企業が68%で圧倒的に多かった。大手通信のAT&T、重機械大手キャタピラー、世界的物流フェデックス、IT大手インテル、証券取引所のナスダックやNYSEユーロネクスト、薬品大手ファイザーなどよく知られた企業がズラリとならぶ。次に多かったのは航空機製造のボンバルディア、消費財のウェスト49などがリストに載ったカナダ(8%)だ。北米企業だけで76%、全体の4分の3を占める。
欧州企業でも化学大手BASFや有力自動車BMWなどのドイツ企業が7%、これに電力・充電大手ABB、薬品大手ノバルティスが登場するスイス企業(4%)などが目立つ。英国やフランス、イタリアなどの企業がツイッターに取り組むのはこれからというところか。
ところで、前出のようにこの3カ月で、ツイッターにアカウントを開設した企業は約4.4倍増となったのに対し、IR関連のアカウント増は約2倍増に止まった。なぜだろう?その理由は140文字までの短い言葉のツイッターで企業情報を公開することにIR現場がまだ確信を持てない事情があるようだ。
そのひとつは、企業の将来情報に関する米証券取引委員会(SEC)の規則だ。よく説明会の配布資料で見かける注意喚起の文章を思い起こされたい。たしかに140字で、この文を掲載するのは難しい。また、毎日のようにたくさんの書き込みがあるツイッターでIR情報を追うだけの時間が投資家にあるのかといった懸念もある。そうした事情から投資効率を考えると、いまひとつ踏みきれないというのだ。調査によると、前回8月にツイッターをIRに利用していたが、今回は利用していない企業も10社あったという。
ツイッターはミニブログともいわれ、短文で素早く情報を交換できるというライブ感にあふれる魅力は大きい。ここにきて、これまでのパソコンメールからブラックベリーやケータイのメールやツイッターに集まる関心はいちだんと強まっている。ユーザーの好感度も高い。それだけに、各社のIR関係者が英語版はもちろん各国語版のツイッターに乗り出すのも時間の問題だろう。
◇ライタプロフィール
米山徹幸(よねやま てつゆき)
大和総研・経営戦略研究所客員研究員。近書に「大買収時代の企業情報〜ホームページに『宝』がある」(朝日新聞社)ほか。最近の寄稿に、「ガリオン・スキャンダル〜問われるIR支援会社の顧客情報管理〜」(「広報会議」2010年2月号)、「『100年に1度』の経済危機を乗り越える米企業の業績ガイダンス」(「月刊エネルギー」2010年1月号)など。「日経マネー」(日経BP)に「個人投資家のための企業IR透視術」を連載中。
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