成熟期迎える米国市場から考える、国内ソーシャルアプリ開発者の3つの戦略 - (page 2)

 その結果、2008年5月にはFacebookが1.2億MAU、MySpaceが1.1億MAUと逆転する。そして、2010年3月には前述の通りFacebookは4億MAUとなり、SNSのスタンダードとしての地位を揺るぎないものとしている。オープン化の推進によって外部SAPがFacebookに集まり、外部業者の魅力的なアプリがユーザーを呼び込むという好循環に入ったのだ。こういった米国での状況もあり、日本のSNSもオープン化政策が成否を分けることを十分承知している。そこでmixiのオープン化を契機に3大SNSがすべてオープン化の方向に舵を切ったのだ。

米国ソーシャルアプリ市場の成熟化への道筋

 次に、米国でのソーシャルアプリがどのように成熟していったのかを、「黎明期」「勃興期」「成長期」に分けて紹介する。
  • 黎明期
    Facebookのオープン化直後は、「コミュニケーションアプリ」全盛の時代で、RockYouやSlideがメインのプレーヤーであった。Facebookのマイページトップで、友達の情報などが更新されていく機能である「Wall」を拡張するRockYouの「Super Wall」やSlideの「FunWall(現FunSpace)」、特定の友達を抽出してコミュニケーションを促進する「Likeness」(RockYou)や「Top Friends」(Slide)、ミニメッセージの「X Me」(RockYou)や「SuperPoke」(Slide)などのアプリが人気トップ10の大半を占めていた。とにかくPVを集めて広告でマネタイズするというモデルか、規模化可能なマネタイズのモデルが見えていないアプリばかりという時代であった。
  • 勃興期
    マネタイズのモデルが見えない状況は、2008年後半Zyngaが「Texas HoldEm Poker」「Mafia Wars」といった、アイテム課金型の「ソーシャルゲーム」が登場したことから破られる。Zyngaは、1人で楽しめる遊びゲームの対戦モードや得点ランキングなど、表面的に友達と絡むだけでなく、友達の多さが自分の強さに直結する、友達とのやり取りでアイテムを獲得するといったゲームシステムそのものにソーシャル性を組み込むことで、爆発的にユーザーを増やしていった。また、ゲームというエンタテイメントの特性上、ユーザーへの接着が高頻度かつ長時間となり、アイテム課金による収益化を可能とした。Texas HoldEm PokerとMafia Warsは2009年6月にはFacebookのランキングで、各々1300万MAUと1200万MAUで1、2位を独占した。以降Zyngaは、規模にものを言わせ、勝ち続ける戦略を採っていく。
  • 成長期
    2009年6月時点でZyngaはFacebookにおいて計5000万MAUを誇っており、ランキングトップ10に3本がランクインしていた。そして、同月にはメガヒットゲーム「FarmVille」をリリースし、初月で500万MAUを獲得する(2010年3月には8200万MAU)。Zyngaの成功には、ゲームの品質というよりは規模をテコにした戦略が効いている。たとえば、競合がヒットゲームを出すと、直ぐに“オマージュ”して類似ゲームをリリースする。そして、既存ゲームの膨大なユーザーに誘導をかけ、あっと言う間に規模を逆転するのだ。Playfishのレストランゲーム「Restaurant City」のヒットを受けた数カ月後には「Cafe World」をリリースし、1カ月未満で2800万MAUを獲得。1800万MAUのRestaurant Cityを抜き去り、一気にランキング2位にまで踊り出た(1位はZyngaのFarmVille)。また、体力にモノを言わせ大量の広告費を投入し、節操がないと言っても過言でないほどにユーザー獲得に励んでいる。これが好循環を産み、成熟期に差し掛かった市場の中で独走状態を築いている。

日本のSAPの戦い方

 筆者は現状の日本のソーシャルアプリ市場は、ちょうどコミュニケーションアプリがPVを集める勃興期から、ゲームによって規模化、収益化する成長期に差し掛かっているところと見ている。では、今後市場の成熟化が急速に進む中、SAPはどのように戦えば良いのだろうか。米国の代表的なSAPを事例に、ポジショニングごとに日本のSAPが採れる戦略を考えてみたい。「ターゲット市場(メインなのかニッチなのか)」および「優位性 (強いのか弱いのか)」によって規定されるポジショニングによって、「リーダー戦略」「差別化戦略」「すみ分け戦略」の3つの戦略がとり得ると考えている。

ポジショニングごとの戦略 ポジショニングごとの戦略

リーダー戦略:Zynga

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