成熟期迎える米国市場から考える、国内ソーシャルアプリ開発者の3つの戦略

 テクノロジーベンチャーが直面する課題や成長のステップについて紹介する本連載。2009年10月から2010年1月までの6回では、各業界でのセオリーや成功要因を事例とともに紹介してきた。今回からは、「各業界で今何が起きているのか、今後何が起こるのか」を意識して、各業界でベンチャーが勝ち抜くための戦い方について考えていく。

 まず今回は、熱気が高まるソーシャルアプリ業界を見てみたい。2009年8月にはmixiのPC版が、10月にはモバイル版がそれぞれオープン化し、2010年年始にはモバゲータウンもオープン化。GREEも6月にオープン化すると発表している。これまで「2〜3年で1000億円」と言われていた市場規模についても、「1000億円は通過点に過ぎない」との見方も出てきた。モバイルを中心とした日本のソーシャルアプリ市場はまさに“ゴールドラッシュ前夜”の様相を呈している。モバイルとPCの差こそあれ、米国では2007年5月にFacebookがオープン化し、進化の先を走っている。ゴールドラッシュの果てにある市場環境、そしてその中でソーシャルアプリプロバイダー(SAP)の戦い方を検証していく。

米国ソーシャルアプリ市場の現状

 米国のソーシャルアプリ市場は、成熟期に差し掛かかっていると言っても良いだろう。FacebookとMySpaceのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のスタンダード争いも、Facebookの圧勝で決着がついている。2010年3月時点でFacebookの月間アクティブユーザー(MAU)が4億人なのに対し、MySpaceは登録ユーザー総数でも2億人強だ。またFacebook上のソーシャルアプリ市場は2009年時点で1000億〜2000億円の規模にまで達したと言われている。

 SAPについても、群を抜くユーザー数と収益で圧倒的なリーダーとなったZyngaに加えPlayfish、Playdomが「Big3(3強)」と言われている。2009年の売上でZyngaが200億円程度、Playfish、Playdomが数十億後半〜100億円規模にまで達している。また、Facebook上のSAPとmixi上のSAPでユーザー数の分布を比較すると、下図の通りFacebookでトップSAPへのユーザーの集中がより進んでいるのがわかる。

FacebookとmixiにおけるSAPの集中度合い FacebookとmixiにおけるSAPの集中度合い

 そして、勝ち組のSAPは2009年末に大型資金調達を立て続けに実施し、いよいよ規模がさらなる規模を呼ぶ段階に入っている。Zyngaが180億円、Playdomが43億円の調達し、積極的に買収を仕掛けている。また潤沢な資金力をもとに大量の広告費を投入しており、小さいプレーヤーが追い上げにくい構造を作りだしている。たとえば、Zyngaは2009年に60億円以上を広告費として使っている。

主要SAPの資金調達、M&A事例 主要SAPの資金調達、M&A事例

 一方で、ソーシャルアプリには他業種からの視線も熱い。世界最大のビデオゲームメーカーであるElectronic Arts(EA)が2009年11月に400億円でPlayfishを買収したほか、Microsoftも新進気鋭のCrowdstarに200億円で買収交渉に入っていると伝えられている。では、どのような過程をたどりこのような活況な市場に発展したのだろうか。

米国SNSプラットフォームの覇権争いとオープン化

 2006年6月時点では、MySpaceは5140万MAUを誇っており、一方でFacebookは1400万MAUという状況だった。MySpaceがユーザーを自社に囲い込むべく外部SAPのアプリの機能を限定し、“クローズ化”の方向に舵を切ったのに対し、Facebookはその真逆の施策を採る。2007年5月からは積極的にAPIを開放するなど“オープン化”を推進していった。

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