イタリアの裁判所は、ダウン症の少年がいじめられている動画が「Google Video」にアップロードされた問題をめぐって、Googleの幹部3人にプライバシー侵害の有罪判決を下した。
Googleの最高法務責任者(CLO)のDavid Drummond氏、プライバシーカウンセルのPeter Fleischer氏、元最高財務責任者(CFO)のGeorge Reyes氏の幹部3人は、名誉毀損の罪に問われることはなかったものの、イタリアのプライバシー保護法に違反したとして、6カ月の執行猶予判決が言い渡された。一方、4人目の被告となる同社マーケティングエグゼクティブのArvind Desikan氏は、すべての告発において無罪となっている。
問題となっているいじめの動画は、2006年にトリノの学生たちが投稿したものだが、Googleの幹部らは、社内で当時責任ある立場に就いていたという点を除いて、この動画とは何ら関わりがなかった。
Reyes氏は2008年にGoogleを退職したため、有罪とされた幹部のうち、依然としてGoogleに勤めるDrummond氏およびFleischer氏が現地時間2月24日に声明で、今回の判決を不服として「断固として控訴していく方針である」と語った。
Drummond氏は「24日にミラノで裁判官が下した、同級生によっていじめられているダウン症の少年のプライバシーをわたしが侵害したとの有罪判決に憤りを覚える」と述べ、同判決は「恐ろしい先例」となってしまうとも付け加えた。
「もしわたし自身やGoogleに勤務するわたしの同僚のような個人が、いじめの現場や動画の撮影、Google Videoへのアップロードに一切関与していなかったにも関わらず、単にGoogleの社内で責任ある地位に就いていたというだけの理由で有罪とされるのであれば、あらゆるインターネット上のホスティングサービス企業の従業員は、同様の責任を負わねばならないことを意味する」と、Drummond氏は語っている。
Drummond氏は、問題となった動画がGoogle Video上にアップロードされたことに気づいた時、直ちにGoogleが動画を削除した点も指摘している。同氏は、欧州およびイタリアの法律では「Googleを始めとするインターネットのホスティングプロバイダーが、ホストしているコンテンツの監視を求められたりはしていない」とも述べた。
一方、Fleischer氏は、すでにGoogle Videoから問題の動画が削除されてしまう時点まで、まったくその動画の存在すらも知らなかったと語っている。同氏は「自分の職業人生を少なからず個人のプライバシーの保護に捧げてきたわたしとしては、問題の動画で少年が悲惨ないじめに遭っていることを知り、深い悲しみに沈まざるを得なかった」と述べた。
このいじめの動画をめぐる訴訟は、Googleの提供するオンライン動画サービスに関連するイタリア当局との対立の一例に過ぎない。2009年12月には、現在イタリアの首相を務めるメディア王のSilvio Berlusconi氏が設立して保有するイタリア放送局のMediasetが、同社のコンテンツをGoogle傘下のYouTubeにアップロードされたと訴え、勝訴に至っている。
2010年1月には、イタリア政府が新たな法令を発表し、動画を公開する全ウェブサイトに対して公式免許を保有することを義務付け、著作権侵害行為に対する新たな罰金を設けようとしている。
Fleischer氏は2月24日に声明で、イタリアの裁判所で下された判決は「デジタル時代における表現の自由の重要な基盤である多くのインターネットプラットフォームが、今後も運営を継続できるのかといった、より幅広い疑問を提示するものともなる」と語った。
「共に闘う大勢の人々の一員に過ぎないとわたしは認識しているが、それでもわたしは、24日の判決は控訴して覆されることになると確信し続けている」と、同氏は述べた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。原文へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス