Googleブック検索による情報の一極支配について警鐘を鳴らした書籍「Googleとの闘い-文化の多様性を守るために」の著者であり、前フランス国立図書館長のジャン-ノエル・ジャンヌネー氏を招いた講演会「インターネットと文化:チャンスか危機か」が9月15日、国立国会図書館で行われた。
2002年から2007年にわたり、フランス国立図書館長を務めたジャンヌネー氏は、在任中にヨーロッパの電子図書館Europeanaの創設に深く関与した人物としても知られ、書籍のデジタルアーカイブにおいては世界でも注目を集める第一人者。
ジャンヌネー氏は、新技術による書籍のデジタルアーカイブ化を歓迎する一方で、それが生み出す文化的な負の側面を次のように危惧(きぐ)する。「15世紀にグーテンベルクの印刷技術の発明により、それまで限られた層にしか届かなかった文化が大衆の間に広がり、それが改革を生んだ。しかし、その一方で、マイノリティーでローカルな文化は印刷されないという文化の不均衡も生じた。これはインターネットの世界にも同じことが言える」(ジャンヌネー氏)。
また、ジャンヌネー氏はネット上の情報には(1)利潤の追求だけに陥ってしまいがちな点(2)誤った情報が驚異的なスピードで広がってしまう可能性がある(3)大量の情報を体系化せずに流通してしまうことで、人々の知性が麻痺してしまう--という3つの脅威が存在すると話す。
ジャンヌネー氏は、2003年12月にGoogleが現在のGoogleブック検索にあたる計画を発表した際には、フランスやヨーロッパの図書館関係者として先頭に立って対応にあたったひとりだ。そんな自らの経験に基づき、当時直面したGoogleブックの問題点を次のように振り返る。
「今日までに1億3000〜5000万タイトルが出版・印刷されているなかで、これらの順位付けをどのように行い、取捨選択するか。また、米国の一私企業であるGoogleが主導することにより、アングロサクソン系の文化が優遇されてしまうのは自然な流れだ。これは単純な善悪の問題ではなく、文化の多様性のために避けなければならないことだった」
同氏はこのように話し、Googleに対抗すべく、EUが中心となったEuropeanaの構想に至ったことを明かした。
さらに、Google書籍検索のもう1つ大きな問題点として、同社が商業的な企業である点を挙げる。ジャンヌネー氏は「Googleは広告収入によって成り立っている企業。当面は書籍検索に広告を利用しないと言っているが、検索結果の順位付けに何らかの影響を与えてしまう可能性はあるだろう。そして、将来的に書籍販売にも乗り出すという話になれば、Googleが市場で支配する力は絶大ものになり、これは非常に危険なことだ」と語る。
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