Googleブック検索が文化にもたらす負の作用--前フランス国立図書館長が講演 - (page 2)

 また、フランスラジオの会長を務めた経験もあるジャンヌネー氏は、文化的なサービスは民間と公共の両立体制にあるべきだという考えを持っている。「日本やフランスの放送界のように、文化的なサービスとは、民間と公共が両立してこそ豊かになると考えている。そして、これは図書の問題にも適用できるはず。公的な資金で運用する公共の図書館と、利益を追求を求める図書館との競争というのもありではないか」(同氏)。

 著作権の問題にも考慮しなければならない出版物のデジタル化だが、その際、ジャンヌネー氏はこれまで以上に出版社や図書館司書の役割が重要となると考えている。同氏は「フランスの出版社や図書館の職員は、デジタル化の波について、当初『自分たちの遺産や存在意義が失われてしまうのではないか』と危惧(きぐ)していた。しかし、多くの作品があるからこそ、仲介者というのはこれまで以上に必要だろう。昨今のウェブの世界においては“群集の叡智”という考え方がある。しかし、Wikipediaを例にした場合、それぞれ重要性が異なるのにあらゆるデータが並列されているという点が大きなデメリットだ。思想というのは、説明し立証されなければならない」と、情報提供のあり方についての考えを示した。

 また、Googleをはじめ、ネット上で提供される無料のサービスについて、「たとえ無料がうたわれていても、実際には無料というのはない。実際には、広告費用が消費コストに反映されていることを忘れてはならない。結局は、無料か有料ではなく、どうやって支払っていくかの違いだ」と批判し、文化の多様性を守るためには、対価を支払うことも必要であると主張した。

 一方、Googleの和解案訴訟のヨーロッパにおける状況について、「米国だけで支払いがされてほかの国の出版社にはまったく支払われない仕組みだということに、ヨーロッパの出版社や権利者も日本同様に反発を強めている。ドイツなどは司法省が対応し、国として関与していく姿勢だ。Googleへの風当たりは世界的に強くなってきたと思う」と語った。

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