UPDATE Microsoftと米Yahooは、米国時間7月29日に検索および広告分野における提携を発表したものの、Yahooの株価は前日比で12%安を記録するなど、投資家からは厳しい評価を突きつけられた。IDCのアナリストは、今回の提携が「戦略的に誤っている」との評価まで下している。
とはいえ、両社の提携には良い面もある。これまで1年半ほどに及ぶ両社間の論争、舞台裏で展開されていたドラマ、そして、メディアへの情報リークによって生じたコミュニケーション上の問題を経て、ついにMicrosoftとYahooは、本来の事業へと注力していくことが可能になる。
MicrosoftとYahooが協調するコンセプトは、両社の間に多くの未知なる可能性が広がっていた頃に比べると、単にGoogleという共通の敵を見据えた複雑なる提携関係に終わってしまい、やや肩透かしとなってしまった感もある。MicrosoftとYahooの提携が意味したものは、何ら意義ある提携を行わない点から、完全にYahooが買収されて消え失せる点に至るまで、実に幅が広かったのだが、より現実的に処理しやすいレベルに落ち着いた形である。
両社は提携したものの、以前とは何が変わったのか、ほとんど外部からは違いに気づかないだろう。まずは規制当局による審査が行われることになっており、両社は2010年初めにも承認が得られるものと期待している。しかしながら、すでに今回の提携は、両社が新たなアイデンティティを確立していく上で支えとなるフレームワークを提供するものとなっている。
Microsoftは、Yahooの検索技術ライセンスを取得し、Yahooの検索広告向けオークションプロセスが両社の検索に適用されることになり、MicrosoftからYahooの従業員に対しては、新たに多くの仕事が提供されるようになるのだが、これによって、MicrosoftはGoogleに対し、さらにハイレベルな戦いを挑むことができるようになるだろう。一方、Yahooは、引き続きディスプレイ広告事業を展開し、ホームページのデザイン変更へと注力することで、社外のウェブサイトの開発者向けプラットフォームや、より多くのオンラインユーザーにハブとなる存在として成長を遂げていくことが可能である。
だが、両社のビジョンが重なる分野においては、若干の問題点も残っている。たとえば、すでにYahooは、開発者向けプラットフォーム「SearchMonkey」によって、社外のウェブサイトから提供されるタグを読み取り、対象となるウェブページが検索結果として表示される際に新たな情報を付加することで、検索の充実を図ってきた。SearchMonkeyの稼動には、ウェブページのコンテンツをインデックス化するウェブクローラと、検索結果を提供するサーバ間の協力が必要とされている。
筆者にとっては、これこそMicrosoftとYahooが、検索分野で協力して進めていかねばならない点だと感じている。幸いにも、MicrosoftとYahooは、こうした分野でも改良を目指す100ページに渡る計画書を保持しており、MicrosoftのシニアバイスプレジデントであるYusuf Mehdi氏は、SearchMonkeyが取ってきたアプローチを好んでいるとの見解を、29日に明らかにした。
また、両社は、今回の提携内容を完全に実施するには丸2年を要することを認めており、こうした分野で詳細に至る協調が見られるまでに、いくらか時間がかかることにもなるだろう。とはいえ、Yahooにとっては、ゆっくりと立ち止まっている余裕などない。SearchMonkeyは、Yahooが8月よりユーザー向けにテストを開始する、新たなハイブリッドデザインの検索ページの構成要素となっている。
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