UPDATE カリフォルニア州クパチーノ発--Appleの年次株主総会は、ここ10年以上の期間で初めてのこととして、Appleの創業者で最高経営責任者(CEO)のSteve Jobs氏が出席することなく開催された。総会は、Jobs氏の健康状態をめぐる同社の情報開示姿勢などに関する質問に、最高執行責任者(COO)のTim Cook氏が答えながら、特に大きな混乱もなく終了した。
5つの株主提案が検討されたものの、予備投票の結果、可決に至ったのは、Appleの8人の現取締役会メンバーの再任の議案のみであった。機関投資家に対して堂々と意見を述べて、辛らつな回答を与えるいつものJobs氏の姿こそなかったものの、これまでと同様に、質疑応答セッションは、やや単調ではあったが、非常に興味深い展開となった。
明確にしておくと、Appleのそのほかの株主提案は、経営陣の報酬に関する株主の投票権を認める、いわゆる「Say On Pay」決議案や、高い業績目標の継続的達成の公約、福利厚生の改革を求める決議、政治献金の詳細なリスト公表などがあったものの、いずれも否決されている。まだ予備投票段階での結果ではあるが、米国時間2月25日に行われる最終投票でも、同様の結果が出ると考えられている。
今回の年次株主総会から、より興味深い点をいくつか紹介しよう。
Cook氏と出席しているAppleの取締役(Jobs氏およびGoogleのCEOであるEric Schmidt氏は欠席)に投げかけられた最初の質問は、Jobs氏の健康問題と、1月に同氏の状況についての情報を開示したAppleの姿勢をめぐるものだった。おそらく思い出せるだろうが、Appleは当初、1月に入って、Jobs氏がホルモンバランスの問題を抱えており、比較的短期間で回復すると考えられているとの声明を出していたものの、翌週には別の情報を流し、Jobs氏の健康問題は「もっと複雑なもの」であり、6月末まで医療休養を取ることになると発表した。
米労働総同盟産業別組合会議(AFL-CIO)のBrandon Rees氏はJobs氏の健康状態に関して、「Apple側はどこまで把握していたのか?いつ事実を知らされたのか?」との何度となく繰り返されている質問を投げかけ、さらには、今後のJobs氏の後継者選びに関して、どのようなプランが立てられているのかを明らかにするように、取締役会に説明を求めた。
Genentechの会長兼CEOでありAppleの取締役を務めるArt Levinson氏は、Jobs氏の健康問題をめぐる一連の質問に回答した。同氏は、Appleが財務情報の開示をめぐる、あらゆる法的責務を十分に果たしてきたとの確信を抱いており、Jobs氏の後継者に関しても、これまで何年も取締役会で検討が重ねられてきたと語っている。
Levinson氏は、情報開示問題などをめぐり投資家が懸念を募らせていることを受けて、複数のコーポレートガバナンスの専門家が、Jobs氏の引退後の計画を明確に示していくようにAppleに対して求めているものの、その一切の計画を公の場で明らかにすることは拒んだ。
Appleにおける重要な戦略的意思決定には、Jobs氏が「引き続き深く関わって」おり、この方針に変更が加えられたならば、速やかに株主に対してお知らせすると、Levinson氏は述べた。
Jobs氏の健康問題に関して、最後に発言した株主は、Jobs氏が「一刻も早く完全な回復を遂げるように」と、単に自分の願いを述べるにとどまり、24日に54歳の誕生日を迎えたJobs氏に向けて、場内で「ハッピーバースデー」のコーラスを指揮した。
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