サンフランシスコ発--「Web 2.0 Summit 2008」はクラウドの話題でもちきりだった。各企業の幹部たちが口々に、クライアントから数百万台もの仮想化サーバーを連携させた情報パイプへの移行を議論していた。
Cisco Systemsの最高技術責任者(CTO)Padmasree Warrior氏はこう語った。「クラウドについては、大げさな話がたくさん出ているが、われわれはコンピューティングの次なる進化と考えている。それは、サービスとアプリケーションを物理的なリソースから抽出して、オンデマンドレイヤの利用を拡大する方法だ」
Warrior氏の考えでは、クラウドコンピューティングはプライベートな独立型のクラウドからハイブリッドなクラウドへ進化し、それがクラウド間におけるサービスとアプリケーションの動きを可能にして、やがては連合型の「イントラクラウド」が実現するという。
「われわれは、アプリケーション情報の相互移動に向けた連合を伴う『イントラクラウド』へと移行しなければならない。これは、インターネットが進化してきた道筋と大きくは変わらない。そこへたどり着くのには数年かかるだろう。セキュリティと負荷の均衡化と相互接続について考えなければならない。アプリケーションの開発と実装を可能にする柔軟性と速度が、この変容を推進する基本的な利点になる」(Warrior氏)
Warrior氏は、クラウドコンピューティングのスタックを、4つのレイヤを備えるものとして説明した。4つのレイヤとは、ITの基礎、柔軟なインフラ、サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)、そしてアプリケーション(サービスとしてのソフトウェア、SaaS)だ。VMwareの最高経営責任者(CEO)Paul Maritz氏は、salesforce.comやMicrosoftがリリースを予定している「Windows Azure」などのPaaSは、開発者に難題を課していると指摘した。「開発者は、大きな賭けをしてプラットフォームを選択しなければならない。私は、よりオープンで標準化された技術の他のソースを検討する余地があると思う」とMaritz氏は述べた。
Adobe SystemsのCTOを務めるKevin Lynch氏は、クラウドコンピューティングではプラットフォームレイヤの互換性に問題がある点を認めた。「アプリケーションの実行とデータの収集に関して言えば、クラウド内への固定化のレベルが、今や継続性の観点から危険な状態に達した」とLynch氏は述べた。
GoogleのEnterprise部門プレジデントを務めるDave Girouard氏は、知的財産をクラウド間で移動させることについて、法律上の潜在的な問題を指摘した。「誰が何を所有しているかについて、法的に不明瞭な分野だ」とGirouard氏は述べた。salesforce.comのCEOを務めるMarc Benioff氏は、クラウドサービスをマッシュアップする方法の例として、同社プラットフォーム「Force.com」とGoogleおよびFacebook間の統合をアピールした。
やがては、あらゆるレイヤのクラウドコンピューティングのプロバイダは、よりオープンで標準に準拠するようになって、クラウド間の連合と移動を実現させていくのだろう。Maritz氏は、クラウドコンピューティングが、情報経済を推進して新しい情報市場を刺激するのに貢献すると見ている。
Maritz氏は「難題は、他者が価値を追加できるように、選択的かつ安全に情報を入手可能にする方法だ」と述べた。しかし、単純にデータとアプリケーションをクラウドの中に置くだけでは、動的な情報市場は構築できない。「新しいデータの提示とそのデータに注釈をつける方法を見つけなければならない」と、Maritz氏は述べた。確かに、Web 3.0やセマンティックウェブと呼ばれるような形が実現しなければ、クラウドコンピューティングはさほど魅力的なものではないかもしれない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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