Appleは、自社を象徴する「iPod」ラインアップに関しては、「触らぬ神にたたりなし」という古い格言を肝に銘じているようだ。
米国時間9月9日のiPod関連イベントでは、ほとんど驚きはなかったが、トップの座を維持し、より多くを求める顧客を呼び戻すために必要なiPodラインアップの段階的な変化へのAppleによるコミットメントがあらためて表明された。最高経営責任者(CEO)のSteve Jobs氏が紹介した新しいカラフルな「iPod nano」と価格を下げた「iPod touch」は、iPodの年間売上高の40%を占めるホリデーシーズンのラインアップの中心になる。
投資家はこの新しいiPodに感銘を受けなかったようだ。しかし、9月9日は株式市場全体にとってひどい1日となっており、また、正式発表後の株式売却はAppleのイベントに対する標準的な市場の反応だ。事実をねじ曲げて言うのが得意な一部の評論家の意見を耳にしているかもしれないが、Appleに注目することを楽しみ、仕事にしている人たちのほとんどは、今回のイベントで熱狂するような発表があるとは予想していなかった。
過去3〜4年にわたって、Appleは、旋風を巻き起こすスペシャルイベントで、未来のマーケティングの教科書に載るような手本を示してきたが、iPodはありふれたものとなっている。9月9日のイベントで発表されたNPDの調査によれば、初代iPodの発表から約7年たった現在、ポータブルデジタルミュージックプレーヤーをほしいと思っている米国民の73%以上がiPodを選んでいる。
もはやAppleは、iPod nanoで人々に衝撃を与えた2005年のように、業界の支配力を強化しようとする、向こう意気の強い負け犬でもなければ、2007年のように「iPhone」で、確立された市場を揺るがそうとした部外者でもない。Appleはミュージックプレーヤー市場を独占している。Appleはこの市場では巨大企業であり、競合会社による攻撃にさらされていない企業というのは大きな危険を冒そうとしないものだ。IntelやMicrosoftに聞いてみればいい。
よって、9月9日のイベントでは、Jack Johnson氏がiTunes史上最も売れた男性アーティストであるという少々意外なニュース以外、あっと驚くようなものは何もなかったかもしれないが、たしかに失敗ではなかった。ぜひ、CNETのiPod専門家であるDonald Bellによる新型iPod nanoのカラーの追加に対する考えをチェックしてほしい。事実、了見の狭いウォールストリートの人たち以外からは失望の声はほとんど出なかった。
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