アップル「iPod」イベントの意味--旋風が不要となった市場の巨人 - (page 2)

文:Tom Krazit(CNET News.com)
翻訳校正:ラテックス・インターナショナル
2008年09月12日 16時40分

 iPod nanoの新しいデザインは、偉大な祖父である2005年モデルほどの新味はないが、長くてスリムなデザインへの回帰は一見したところ、2007年に発表された「太ったnano」よりも好評のようだった。iPhoneの加速度センサーが新しいiPod nanoに追加されたことで、最も人気のあるiPodでのビデオ鑑賞がより魅力的なものになっている。

 同様に、1周年を迎えたiPod touchについても急進的な変化もほとんど予想されていなかったが、「Nike+iPod」ソフトウェアの追加、薄くなったデザイン、値下げによって、iPod事業の未来を期待されているiPod touchへの人々の関心を維持できるはずだ。

 新しいiPodや、Jack Johnson氏のライブなどで見落とされてしまっているが、おそらく、イベントで最も重要な発表だったのは、過去最大のバグを含んだソフトウェアリリース「OS X iPhone 2.0」を修正したとAppleが確信していることだ。iPod touch、iPhoneユーザーは今週末、通話の中断、正常に機能しないアプリケーション、バッテリ寿命の短さ、長ったらしいバックアップなど、Jobs氏の言う「たくさんのバグ」を修正できるようになるという。

 Appleを現在の地位に導いた旋風を巻き起こすイベントなしに、Appleが21世紀もテクノロジの花形であり続けられるかどうか疑問に思うのは、無理からぬことだ。「Mac」やiPhoneの市場では、Appleは巨大企業の中では比較的小さい企業であり、これは事実だろう。しかしiPodに関しては、イベント関連の旋風はさほど重要な要素ではない。この点において、Appleにはミュージックプレーヤーのデザインの才能があることを疑うものはほとんどいない。

 iPodが頂点に君臨し続けられるかどうか懸念するAppleのiPodのエンジニアやマーケティング担当者にとって、旋風よりもはるかに重要な要素がある。現在、AppleにiPodの革新を迫る競合会社が存在しないため、Appleは、この市場でトップを維持するために、かっこよく見せ、品質管理を維持しながら、簡単に携帯できるデジタルメディアを楽しめる手段を人々に提供する、魅力的な製品をデザインすることによって、自らの意欲を刺激しなければならない。さもなければ、遠い未来、向こう意気の強い負け犬がAppleに忍び寄るかもしれない。

 Appleは、毎年、必ずしも驚嘆させるものではないが、列車を走らせ続けるための段階的な変更を1つか2つ、iPodに加えるというぜいたくをしてきた。

 デジタルミュージックで音楽を聴く人たちの約4分の3が自社の製品を持ち歩いており、あらゆる電波に自社の広告を流すことができ、さらに、競合会社が自社の進歩に到底及ばないなら、毎回ホームランを打つ必要はないのだ。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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