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「検索市場の3強にならないと、ヤバイかな」--百度社長、井上氏

鳴海淳義(編集部)2008年09月01日 22時30分
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 8月1日、元ヤフー検索事業部長の井上俊一氏が、中国の検索サービス「百度」日本法人の代表取締役に就任した。

 同氏はエキサイトでCTOを務めたのち、2004年にヤフーに入社。検索事業部長として、米国 Yahoo! Inc.と共同でYahoo! Search Technologyや検索連動型広告を開発したほか、Yahoo!知恵袋などのYahoo! JAPANの検索関連プロダクトの全指揮をとってきた。

 百度は2008年1月23日に日本向けサービス「Baidu.jp」を正式オープンしたばかり。10年以上にわたって日本の検索サービスに関わってきた井上氏が陣頭指揮を執ることで、百度は今度どのような戦略を描いていくのだろうか。

--百度に移られた経緯を教えてください。

井上俊一氏百度代表取締役社長 井上俊一氏

 いくつかあるんですが、1つはロビン・リーという中国百度のCEOと一緒に働きたかったというのが大きな動機としてあります。

 彼は2000年に百度を立ち上げて、米国から中国に帰ってきました。後発ながらも1人で百度を中国のサイトの圧倒的ナンバー1に育てたのはどういう人物なんだろう、と。彼の成功体験と私が日本でやってきた検索業界での経験が合わさったら面白いかなと思っていました。

 もう1つは、少し長いスパン、今後10年間でどのように社会が変わっていくかを考えてのことです。インターネットが発祥してからこれまで14、15年はアメリカ中心で来ましたが、そこがアジア中心にシフトしていくことがほぼ明らかです。

 ですので、次の10年に自分の活躍の舞台をどこに持ってくるか、あるいはどこにいたら検索業界が1番よく見えるようになるかと考えたときに、アジアにフォーカスしたほうが良いのではないか、アジアで1番になるには百度にいるのが良いのではないかと考えたのです。

--百度の社長としてのミッションとは?

 当然、使われるサーチエンジンになることがミッションです。まだ具体的な数字や売上目標をお話しできる段階にはありませんが。

 検索の会社というのは世の中にあまりありません。ヤフーとGoogleという2大サーチエンジンがあって、検索だけに特化して開発している会社というとGoogleになると思うんです。少しずつそのシフトが起こっているとは思いますが、市場が成熟してくると、だんだん専門サイトが使われるようになると思うんです。

 今後は細かい特定のニーズに応えるために、すごく専門化されたサイトがどんどん出てくる。そして、相対的にポータルの力は徐々に弱まっていくと思っているので、細分化、専門化されたニーズの中で検索エンジンを選ぶとすると、選択肢がGoogle1つしかないのはヤバイだろうと。

 ユーザーにとっても1つしか選択肢がないのは不幸だと思うんです。最低でも2つ、3つぐらいあったほうが本当はいいんじゃないかと。そういった意味で検索に特化したもう1つの選択肢になるのが大きなミッションではないかと思っています。

--とはいえ、ヤフーやGoogleと並んで使われるようなものになるのは難しいことですよね。

 とても難しいことだと思いますよ。検索というのはもう生活の一部になっているので、突然ドラスティックにシフトが起こるとはちょっと思えないですね。

 なので、まずは動いてくれそうな人たちから動いてもらう。例えば、画像検索や動画検索などエンターテインメント寄りの分野から百度を使ってもらえるといいかなと思っているんですよ。

 ウェブサーチに比べると、的を絞った分だけユーザー数は少なくなってしまいますが、その人たちはチャンスがあればいいものを使ってくれると思います。

 特にウェブサーチと違って、画像、動画検索は何が出てくるか見てみないとわからないですよね。ウェブサーチだったら、例えば必ず1番にこういうページが出ていて欲しいとか、1ページ目はこんな感じの順位になって欲しいというのが想定できますが、画像や動画には正解がないので、「1番はこれ」という決まりはないわけです。

 そうすると、百度で何か面白いものが出てくれば、使ってくれるチャンスは高いと思っています。そういうところからコアのファンをつかんで、少しずつウェブサーチも使ってもらうというような順番になればいいかなと思っています。

百度日本版百度では、ウェブ、画像、動画、ブログの4つの検索サービスを提供している。サービスの企画は日本で、開発は主に中国で行っているという。新サービスも開発中とのことだ。

--自分が今まで育てたヤフーは強敵ではないですか。

 今のままですと百度は機能的に足りないもののほうが明らかに多いですから、相当大変だと思いますよ。まず認知度がまるでないですよね。良いか悪いかの前に、そもそも知られていない。知らないから使わない。そこがプロダクトの性能以前の話です。

 さすがにヤフーを知らない人はもういないと思うので、そういった意味で何をやっても(ヤフーは)有利ですよね。

--先ほど相対的にポータルの力が弱まるとおっしゃいましたが、今後、日本の検索はGoogleが伸びていくだろうと考えていますか。

 そこですが、Googleが伸びるというよりも併用者が増えるというイメージです。Googleしか使わない人が増えるというイメージではなくて、ヤフーを使っていた人がGoogleを使い始める、あるいはGoogleが主利用になるけれどもサブの利用として他の検索エンジンも使うみたいな感じになると思います。Googleだけが伸びるというイメージはないですね。

 実際にGoogleの使われ方はそうなっていると思うんです。圧倒的に併用者が多い。ヤフーしか使わないという人はまだ実際にいるんです。だけど、Googleしか使わないという人はほとんどいなくて、Googleを使っている人はどこかで必ずたまにヤフーを使うんですね。

 僕はそれがネット社会がだんだん成熟していっているということなのではないかと解釈しているんです。要は、自分の目的に応じて他の検索エンジンのほうが合っていると思ったら、躊躇せずに主体的に選んで使い分ける人がだんだん増えてくる、ということじゃないかと思います。

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