「MobileMe」の開始当初の問題はさておき、このコンセプトのどこが悪いのだろうか。「Live Mesh」はこのカテゴリに入ると思うが、Microsoftは未だにベータ版しか提供していない。電子メール、カレンダー、連絡先の同期はすばらしいアイデアだ。しかし残念なことに、どうすれば利用者が十分に満足するかは、まだ誰にもわかっていない。
おそらく近いうちに、クラウドベースのストレージを利用者に提供する手段、意欲を持つ企業が増え、状況が変わるだろう。Googleが「GDrive」という名前の「容量無制限ストレージ」を計画しているといううわさは繰り返し浮上している。うわさはその価値を考えなければならないが、Googleの(拡大する)クラウド中心の歴史を見れば、この線に沿った発表が予想されるのは当然だ。
一方、正真正銘、これを真剣に考えている企業がある。
Dellだ。
筆者は最近、Dellでストレージ事業を指揮しているPraveen Asthana氏と話をした。これまで、市場でのクラウドベースのストレージの認識は一様ではなかったが、貴重なデジタルファイルを「外部」に保存することに対して消費者が示した当初の抵抗は、次第に薄れてきていると同氏は言う。
「わたしがそのように考えるのは、人々が今では気楽に写真をクラウドに保存しているからだ。家が火事になったとき、住人が最初に持ち出そうとするのは何か。写真と思い出だ」(Asthana氏)
もちろん、Dellは他社が失敗した分野で成功できるとは限らないことを承知している。そんなに簡単なことであれば、「Xdrive」はAOLの集金マシンになっていたはずだ。しかし、AOLは買収後わずか3年でこのサービスを終了しようとしている。
現時点では、Dellは、このアイデアを検討中であることを認める以外に詳細を発表していない。また、Dellが単独で取り組むのか、それともほかの会社と共同するのかも不明だ。しかし、Asthana氏は、消費者の行動は実際に変化しており、それが、利用者の連鎖全体を巻き込む転換を暗示していると考える。「個人ユーザーから始まることになると思う。その後、中小企業、大企業に展開されるだろう」(Asthana氏)
そうかもしれない。2007年にEqualLogicを買収した後、Dellは現在、さまざまなiSCSIディスクアレイ製品を販売している。果たして、Dellはストレージハードウェアのサプライヤーとしての専門知識をストレージサービスに活かすことができるだろうか。ストレージサービスは明らかにストレージハードウェアよりも複雑だが、Asthana氏の上司は、これまでも、ある分野で学んだ経営の教訓をほかの分野に適用してきている。
Michael Dell氏はIT業界で最も経験豊富な経営者の1人だ。同氏は、コモディティPC、サーバ、サービスを売り出す方法をほかよりも先に考え出すことで、数十億ドルのビジネスを構築した。失敗するたびに、過ちから教訓を得て前進してきた。個人ユーザーをベースとするクラウドストレージに取り組むのは確かにハードルが高いが、Dellはこれまでにも同じことを言っていたではないか。
これが実現すれば、Google、Microsoft(そしてApple)などのような企業に対抗するDellにとって大幅なリードとなる。デジタル写真、デジタル音楽を楽しむ人が増え、それに伴ってストレージのニーズも高まっている中、状況を正しく理解できる企業には十分な余地がある。その上、Michael Dell氏は勝負どころを熟知している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス