音楽データベースの提供からウェブメディアへの「脱皮」進めるオリコン

 株式市場でオリコンの評価が変わり始めている。これまでは音楽データベース提供を主力事業としていたが、すでに収益の中心は同事業でのノウハウを活かした音楽エンターテイメントサイト「ORICON STYLE」などのウェブメディア事業に移っている。広告収入が拡大傾向にあるほか、積極化させているアライアンス戦略にも注目が集まっている。

 オリコンの業績は、経常損益段階から赤字に転落した2007年3月期に続いて、2008年3月期も減収、利益の回復も限定的なものにとどまった。連結売上高は前々期比5%減の58億2400万円、経常損益は前々期7900万円の赤字から黒字浮上するが、黒字幅は5300万円と低水準。最終損益は前々期の6億7600万円の赤字に続き、前期も6億円の赤字を計上している。

 数字だけなら厳しい状況が続いているように見える。しかし、この「低調な決算」には、2009年3月期以降の再成長に向けて打った布石が多く隠されている。オリコンは、今期以降の本業専念を強く打ち出している。

 収益率が低かった通信販売子会社と韓国でビデオオンデマンドを手掛ける子会社の2社を譲渡。ともに将来性が期待される子会社だったが、音楽データベースを中核としたオリコンのビジネスモデルとはシナジー効果を生み出しづらい子会社だった。この子会社譲渡などとともに、会社側ではウェブメディア事業への経営資源集中を掲げている。

 今期の業績見通しについて、連結売上高を前期比12%減の51億円、経常利益は同6倍強の3億5000万円を計画している。事業再構築により、事業規模が縮小して売上高こそ減少するものの、利益面は最悪期を脱出して大幅増益へ転じる見通しだ。

 その他事業を縮小させる一方で、ウェブメディア事業の広告収入は拡大。前期はORICON STYTEのユニークユーザー数が1211万人(2008年3月時点)まで増加し、ナショナルクライアント向けのタイアップ広告が成長。広告収入は前々期比56%増となった。

 広告収入は今期も前期比25%増と成長継続を見込み、全売上高に占める割合は前期の15.1%から21.7%へ上昇する計画となっている。オリコンは音楽データベースを軸に広告で稼ぐ企業へ、着実な脱皮を進めている。

 そしてもう1つの注目点であるアライアンス戦略。子会社のオリコンDDがヤフーと資本・業務提携を2007年6月に実施。ヤフーの持分法適用会社となり、連携体制を強化している。また、このオリコンDDは、08年5月にはソーシャル・ネットワーキング・サービスのミクシィとも業務提携を実施。ミクシィ向けにエンターテイメントニュースの提供を開始した。ヤフーとは共同広告販売など、協力範囲を拡大させており、今後の業績面への寄与が期待される状況となってきている。

 これらアライアンス戦略の効果もあってオリコンのウェブメディア事業は好調に推移。直近、6月の実績では、ORICON STYTEとランキングポータルサイトの「RANKING NEWS」を合計したユニークユーザー数が1225万3000人と、過去最高を記録。大規模なユーザーアンケートに基づいた顧客満足度のランキングでアフィリエイト広告を販売する「CSランキング連動型広告」という、同社独自の新しい手法の広告も広がりを見せてきている。

 株価は年初を底に収益体質の変化を評価する動きとなっていたが、新興市場全般の低迷を背景に調整局面入りが懸念される状況となりつつある。ただ、オリコンの進める収益体質の変貌、アライアンス戦略への注目度は高い。

 一方で6月25日は光通信による発行済み株式の5%の株式取得が明らかになっている。光通信は中小企業向け事務機器・通信回線販売を主力の多角的な事業を展開している。子会社にモバイルインターネット広告の「e-まちタウン」を保有するなど、インターネット分野でも展開する企業。現時点では株式取得目的を純投資としているが、今後の動向が注目されている。今後はオリコンの「コンテンツ力」も投資対象として魅力を増していきそうだ。

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