「安定志向は要らない」--一人二役、三役をこなす夢の街創造委員会

 1997年の29兆1000億円をピークに年々縮小する外食産業市場。これとは対照的に、順調に伸び続けるのが、調理済みの食品を家庭で食べる中食産業だ。夢の街創造委員会が運営する「出前館」は、そうした市場動向に即応して2000年10月に設立された、デリバリー専門ポータルサイトだ。

 同サイトには、全国規模の大手飲食チェーンから、町の中華料理店や日用雑貨店、クリーニング店に至るまで、全国約7700店の店舗が掲載されている。出前・宅配受注代行サイトとしては日本最大級を誇り、月間ページビューは約2000万PV。「楽天デリバリー」や「ぐるなびデリバリー」といった競合サービスを圧倒している。

 そのビジネスモデルは、チラシを撒き電話で注文を受けるという従来の出前・宅配システムを、インターネットに置き換えたものだ。出前・宅配サービスを行っている飲食店等の情報をサイトに掲載し、利用者からのオンライン注文を店に仲介する代わりに、掲載料と注文数に応じた手数料を徴収する。

 オンラインで注文が入ると、店に自動でオーダーがFAXで届くと同時に電話がかかり、店側は電話機をプッシュ操作するだけで、受注の可否や待ち時間を返答できる仕組みだ。初期費用が2〜4万円、掲載料は月額3000円という導入コストの低さとパソコンが要らないという手軽さ、いままでチラシでは集客できなかった新規顧客にアピールできるという即効性が受け、年を追うごとに加盟店が増加しているという。登録会員数も約128万人に達し、運営会社である夢の街創造委員会は2006年6月に大阪証券取引所ヘラクレス市場への上場も果たした。

 といっても、開設当初から順調だったわけではない。夢の街創造委員会の代表取締役社長である中村利江氏はこう述懐する。

「出前館」を運営する夢の街創造委員会の中村利江氏 夢の街創造委員会 代表取締役社長の中村利江氏

 「全く新しいビジネスモデルだったため、加盟店の理解とユーザーの支持を得るのに時間がかかり、黒字転換するまでに6期を要しました。赤字の頃は人材を募集しても、当社の求めるような前向きな人はなかなか来てくれませんでしたね」

 システム主体の本社を大阪市中央区に、営業メインの支社を東京都港区に置く夢の街創造委員会の社員数は、現在41名。サービスの規模と比較すれば、かなりの少数精鋭といえよう。うち13名がシステムエンジニアだが、その大半は大阪での採用だという。IT競合企業の多い東京より、大阪のほうが、優秀なエンジニアを集めやすいためだ。

 サービスの拡張や、前年比160%程度の割合で増加し続ける注文に対応するため、今後もエンジニアの採用に力を入れていく方針だが、同社は、単なる開発要員を求めてはいない。

 「当社が求めるのは、サイトをよりよくするための方策を企画の段階から一緒に考えてくれるエンジニアです。それができる人、あるいはしたい人でなければ、あえて当社を選ぶ意味はないと思います」(中村氏)

 こうした同社の方針を最も端的に表しているのが、「夢の街創造委員会」という社名だ。中村氏は、「すごく長くて怪しい社名だと思いますけど(笑)」と前置きした上で、社名の由来について次のように解説する。

 「まず“夢の街”は、あったらいいなというサービスを表し、“創造”は、今までにない事業をゼロから掘り起こして作り上げるという意味があります。最後に、当社はベンチャー企業ですので、社員一人ひとりが100%以上の力を発揮し、一人二役、三役をこなさなければいけません。そのためにも、委員会活動のように、挙手した人が実践できる環境を作りたいという思いを込めて、“委員会”としたわけです」

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