求人が売り手市場となり、安定志向も強まるなか、「当社に安定を求める人材は不要」と言い切る中村氏。エンジニアに限らず、同社が求めるのは、速く成長したいと望み、そのための努力を惜しまないベンチャー気質を持った人材だ。現状維持、あるいは安定的な収入を求める人にとって、同社は全く不向きと話す。
「非常に速いスピードで成長している市場や会社とともに、自らも成長したいと考えている人を歓迎します。面接の際も、応募者には必ず、『年収は前職と比べ最初下がります。それでもいいですか?』と確認しています。その代わり、個人の査定は四半期ごとに行いますから、実績さえあげれば、1年後には入社前より年収を増やせる。それぐらいの自信と根性のある人でないと、当社に入っても面白くないだろうと思いますよ」
より早い成長を促すために、社員には、次から次へと新しい課題が与えられる。例えば広報担当の川崎絵美氏は、広告代理店の営業職から同社へ転職したことで、それまでの考え方が一変したという。
「以前は、いち営業マンとして、営業の仕事さえこなせばよかったのですが、この会社に入って初めて、自分で考え出さなければ何も仕事がない、という状況に陥りました。しかも、与えられる課題は、クリアするごとに少しずつ難しくなっていくんですよ(笑)。そこで悪戦苦闘するうちに、会社全体のことが見えるようになりましたね」
また、エンジニアのみを対象とした制度だが、筆頭株主であるヤフーへ3〜6カ月間出向し、自社内だけでは身に付けにくい最先端の技術やノウハウを学べる制度も好評を博している。向上心の強い同社の社員にとって、願ってもない貴重な経験となっているのだろう。
同社では、四半期ごとに目標を設定し、同時に査定も行われる。年に4回の昇給チャンスがあるわけだ。四半期ごとのMVPも、経営陣ではなく、各グループのマネージャーが推薦して、合議によって決定される。グループマネージャーは自部署だけでなく、他部署の社員を推薦する場合もあるという。
さらに、2カ所に分かれている拠点間の交流と他部署の業務への理解を深めることを目的に、四半期に1度、全社員参加の勉強会と、横割りのグループワークが行われる。将来的には、そこから新規事業が立ち上がるようになって欲しいと中村氏は期待を寄せる。
「私もどんどん権限委譲するので、社員自ら出前館のような新プロジェクトを立ち上げ、事業部化していって欲しいですね。なかには当社を飛び出し、新会社を設立する人も出てくるでしょうが、それもいいと思います。会社の規模が大きくなっても、社員全員が新規事業創出にチャレンジできるような、フラットで風通しのいい組織を維持していきたいですね」
とはいえ当面は、サービス内容の拡大や新規事業の創出より、全国に数多く残されている店舗をしっかりと開拓し、足場固めを進める方針だ。それと同時に、懸案となっているプロジェクトマネージャー層の育成にも力を注ぐ。中村氏は、最後にこう付け加えた。
「個人的には、どんどん新規事業を立ち上げ、先へ進みたいと思っているんですけどね。社員にも、私が止めに入るぐらいの勢いでチャレンジして欲しいと思います。今はまだ、私が社員に制止される一方なので(笑)」
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