奇跡は二度起きるか--新たな屋台骨模索するネットプライス佐藤社長に聞く

島田昇(編集部)2008年02月15日 13時21分

 ケータイSNS「モバゲータウン」で飛躍的な成長を遂げたディー・エヌ・エー。柔軟な経営改革により、これまで軸だったネットオークション業から新たな屋台骨を創出したことで有名な同社だが、それ以前に経営改革で大きく業態を変化させたネット企業がある。ネットプライスドットコムだ。

 ネットプライスは当初、「打倒、楽天」をかかげて仮想モール事業を軸に展開していたが、経営戦略を大幅に転換。仮想モール事業から撤退し、ネット共同購入システム「ギャザリング」に経営資源を集中させたことで急成長を遂げ、2004年7月に東証マザーズに上場した。

 未開だったケータイECの分野で突如、トップランナーに躍り出たこともあり、「ネットプライスモール」を知る当時のEC事業者の間では「奇跡の経営」とする声も多かった。

 しかし、2007年4月に当期業績予想を大幅に下方修正。主力のギャザリング不振が表面化したためで、リストラなどを断行し、2007年は赤字転落した業績回復を目指した経営改革に注力する「苦しかった1年」となった。

 ギャザリングの立て直しに一定のメドが付いた2008年は、ドロップシッピングなど布石を打ち始めている新規事業群が新たな屋台骨になり得るか否かを明確にしていく年となる。再び、奇跡を起こすことはできるのか――。同社社長兼グループCEOの佐藤輝英氏に聞いた。

すべてが膨張していた

--2007年9月期は厳しい業績結果(純損失6億円超の赤字決算)となり、経営の立て直しを行いました(直近四半期では前年同期比2割減収も1億円の営業利益を確保)。結局、何が問題で、何を改善してきたのか。

 上場企業として成長性を示すことと利益を確保する責任があるので、2007年当初に「このままの経営体質を引きずっていくことはできない」と思ったんです。

 大きな問題は、売り上げを取るために商品数拡大を目指した商品在庫の確保が過剰在庫の膨張につながり、一方で売り場拡大を目指した積極的なアライアンス戦略を広げていくことで、適材適所ではない商品と売り場が出てきてしまったことです。要は、成長性を示す売上高伸び率を追求しすぎてしまったというわけです。

 そういう状況だったため、「今後は未来の成長につながるものだけをやろう」と決めたんです。これを受け、業務フローを変えて内部改善をしたり、仕組みによっての集客をしたりなどと、企業の体質を変えました。以前までは、商品や売り場が膨張していて、組織そのものも膨張していました。すべてを絞り込んで凝縮させたので、商品の回転率をあげたり、ネットコミュニティを積極化するなどの未来にもつながる核となる事業だけに集中できるようになりました。

 数字的な結果は半年かけて出しましたが、実際の経営体質改善は2007年の5、6月の2カ月でやり、7月でならしをするという流れで一気に進めました。

--膨張してしまったというのは、佐藤社長が新規事業に注力しすぎ、本業がおろそかになった結果ではないのか。

 難しいところです。環境は常に変化しているので、新規事業に注力していなければ、今回の米eBayとの提携もなかったでしょう。ただ、売上高伸び率に目がいきすぎてしまったのは認めざるえないところで、今回は思う存分、これまでの膿を出し切り、本来あるべき姿に成長していくための選択と集中ができたと思っています。自分の中では、「第二次成長期」に向けた一歩を踏み出すことにつながったかなと。

--ただ、2008年9月期は売上高が前年比で減少(前期比9%減の120億円)し、売上高営業利益率(1.3%)も極めて低くなる見通しだ。これでは銘柄としての魅力を感じづらいのではないか。

 自分たちには意志があります。「“ネット流通”というキーワードでイノベーションを起こしたい」という意志です。そのためには、必要な時に必要なことをしなければならない局面もあります。短期的に収益を落とすこともあるでしょう。ただ、中長期で成長性と高い利益率を目指し、これを実現できれば、結果的に投資家のみなさまにもメリットを提供できます。

今期末で高収益体制に道筋

--どれくらいの売り上げ規模と利益率が見込めるのか。

 将来的には売上高で1000億円、売上高営業利益率で10%を目指すつもりです。

--ギャザリングは商品回転率の向上、効率的な売り場開発、ネットコミュニティでの顧客開拓などで立て直しに向かっている模様だが、ケータイを軸にした新規戦略がないように見える。成長性を追求するならこっちではないか。

 ケータイについて我々は先行しています(2007年9月期でギャザリング売り上げの半分程度にあたる58億円)。今はウェブの方が高い伸びを見せていますし、特にケータイだけを伸ばさなければいけないとは思っていません。

--新規事業はネットオークションメディアの「aucfan.com」、ドロップシッピングの「もしも」、海外通販の「セカイモン」があるが、どれがエンジンとなっていつまでにどれだけ収益貢献するのか。

 どれも育成段階なのでこれだけとは言い切れませんが、「もしも」は販売ドロップシッパーが13万人を突破している国内1位の企業になっているので、特に期待しています。

 また、いつまでにどれだけというような無責任なことは言えません。ネット業界だけに限らず、今の世の中の動きは激しいです。描いている戦略には自信があり、足下の状況もいいのですが、まだ種の段階では明言できません。ただ、種が植木になってくればある程度の見通しが立てられるので、おそらく「今期を終えるくらいの段階にならなければ分からない」としか言いようがないです。

--イメージとしては第三の創業段階で、これが成功していつまでに売り上げ1000億円、利益率10%を目指せるか否かは、今期末頃に見えてくるということか。

 そういうことになります。

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