ソーシャルグラフの将来像--「もう一つの社会」が浮かび上がる

山崎徳之(ゼロスタートコミュニケーションズ)2008年02月14日 15時56分

 今回はソーシャルグラフの将来とその可能性について考えてみたいと思います。

 現在のところ、ソーシャルグラフと言った場合には、ソーシャルメディアにおける人に着目したグラフ、という概念が一般的です。

 Wikipediaの「Social graph」の項によれば、ソーシャルネットワークがリンクの有無(もしくはその強さ)だけのものに対し、ソーシャルグラフはリンクの種別を考慮したより上位の概念である、とあります。

 いずれにしてもソーシャルグラフという言葉の定義自体が、まだまだ過渡期であるようです。

 筆者は前回書いたように、ソーシャルグラフは人に限定したものではない、と考えています。

 そしてソーシャルネットワークとソーシャルグラフについて言えば、ソーシャルネットワークはそのリンクの集合、ソーシャルグラフはその構造と現象である、と言えるかと思います。

 いずれにしても、ソーシャルネットワークもソーシャルグラフも「ソーシャル=社会的」な何かを表現しているのは間違いありません。

 SNSやCGM系コンテンツの爆発的な普及によって、ネット上には人の属性(アトリビュート)と行動履歴(リンク)が相当量蓄積されるようになってきました。人だけではなく、モノについてもその属性と、「人の行動履歴を介した」リンク情報が蓄積されています。

 情報がたくさんある場合、その次に来るのは当然その「解析」です。

 十分な情報が存在する場合、それを解析するとそこには構造が浮かび上がってきます。その構造とは、一言で言えば「もう一つの社会(ソサエティー)」であると筆者は考えます。

 ソーシャルメディア上の情報を収集し解析し表現する、これこそが、ソーシャルグラフの役割であると言えるでしょう。

 前回解説したように、グラフを解析するにはまずノードの定義が必要です。ノードが定義できれば、行動履歴をエッジとして表現することができます。そしてエッジの情報を交換、共有して解析することで、ネット上のもう一つの社会を体現することができそうです。

 例えば、mixiやGREEなどのSNS、Amazonや楽天などのECサイト、ソーシャルブックマークサービスやブログなどのソーシャルメディア上での人の属性と行動(行動も属性の一つと考えても良いでしょう)が、標準化されたデータフォーマットとプロトコルによって交換可能になったとします。

 そうすると、mixi上のAさんとGREE上のBさんは近い、というソーシャルグラフとしては比較的良く使われるような例だけにとどまらず、Amazon上のあるPCと楽天におけるパソコンデスクは近い、とか、mixi上のCさんと近いブログや本といった、人同士の関係にとどまらない社会構造がそこに見えてきます。

 解析する対象のデータはウェブに留まりません。もしユーザが許可すればですが、ネット上のメールやメッセンジャーのやり取りを分析するだけで、相当実体を反映したソーシャルグラフがそこに発生するでしょう。

 おそらくメールやメッセンジャーの内容は無視して、そのリンクだけを解析するだけでも、(うわべでない真の)友人関係、上下関係などの人間関係が見えてきそうです。

 それに加えて、もしメールやメッセンジャーなどの内容、すなわちメタデータも解析すると、もはやリアルな社会を越えたもう一つの社会構造がそこに見えてくると思います。

山崎徳之株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ 代表取締役社長

アスキー、So-net、ライブドアなどでシステム設計、構築、運用を行う。2003年9月にシリコンバレーにVoIPの開発会社であるRedSIP Inc.を設立、CEO就任。2006年6月にゼロスタートコミュニケーションズを設立、代表取締役社長就任。Software Designで「レコメンドエンジン開発室」などの連載をしている。

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