世界市場と同じ比率で売っていく――世界市場にゲームで挑み続けるカプコン - (page 3)

――逆に、欧米のソフト販売会社、開発会社が今後本格的に日本市場に攻め込んでくる余地はありますか

 今年の東京ゲームショウで、まさにそうした現象が見えていました。マイクロソフトのブースでUBIソフトの「アサシン クリード」が1時間待ちだった。マイクロソフトの「Halo 3」もやはり1時間待ち。今まで海外タイトルで試遊待ちなんか出なかったんです。それが国内タイトルと同等ぐらいの人気を集めている。日本のユーザーの海外タイトルへの見方は変わってきてるんです。

 欧米のデベロッパーは現行世代機種の開発にいち早く取り組んでいて、もう開発工程も2巡くらいしてる。そうした蓄積がありますから、見た目に関してもかなりのレベル。技術力はもう彼らのほうが上ですよ。

――カプコンはミドルウェア開発についても積極的です。日本でこのレベルのミドルウェアを手がけているのは、あまり例がないと思うのですが、これもやはり海外を意識してのことでしょうか。

 その通りです。海外デベロッパーは一つのタイトルを多くのユーザーに楽しんでもらうため、極力多くのハードに対して展開していこうとしています。3機種、4機種と増えていくと、それぞれに一から開発するなんてとんでもない話になります。それらに対応するためにハードの違いを吸収するミドルウェアを採用してきたのです。

 カプコンが海外で売れるものを作ろうと考えたときに、まずジャンルやタイトルの特性を勉強した。しかし、開発の効率性を上げなければ彼らには追いつけないんです。そこから考え、うちの開発は「ミドルウェアを作らないといけない」という結論に至ったんです。

 ところが、日本のクリエーターの意識には「総論としては分かった。でも各論としては自分たちは自分たちのことをやりたい」という考えがあるんですね(笑)。自分らは一から作りたいと。

 いくら効率よくモノを作れる仕組みを用意しても、それを運用できなければ意味がないんです。この意識を改革できたのがカプコン開発陣の大きな成果だと思っています。作り方を変えましょう、そして、作り方に対する思想も変えましょうと。他社さんでも一番苦労されているのはこの開発の意識改革という部分ではないでしょうか。

――最後にもう一度、ゲーム業界の多様化により、市場は混沌へ向かうのでしょうか。それとも広がっていくのでしょうか。5年後から10年後のスパンをふまえてお話を伺えればと思います。

 カプコンはこれから先もゲーム会社ではあると思いますが、コンテンツ会社として変貌を遂げようとしています。ワンコンテンツマルチユースということで、ゲームからは映画、アニメ、あるいはトレーディングカードなどにも展開できています。この先、ゲームや映像、漫画などの障壁というのは徐々に下がってきて融合していくのではないでしょうか。

カプコン 代表取締役社長 辻本春弘氏

 もちろん、だからといってゲームと映画が全く一緒になるというわけではありませんよ。まず「バイオハザード」のゲームがあって、次に「バイオハザード」の映画がある。この2つは世界観などかぶってるところはあるけれども似て非なるものなんです。ユーザーも違うものと認識しているはずです。その上でゲームはゲームとして、映画は映画として進化を遂げていく。お客様の中には「バイオハザード」がゲームからスタートしたなんてことを知らない人もいるかもしれない(笑)。そこが我々の狙いなんです。

 他メディアへの展開を自分たちでやろうとは思いませんが、最初に我々が作り出したコンテンツが、他メディアへ展開したときにさらに変貌していって、多くのユーザーへアプローチしていく。そうすれば、またゲームにも好影響がありますよ。ゲームは他のメディアと融合しながら、さらに広がりを見せるという展開になるのではないでしょうか。

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