福岡を拠点に多数のタイトル開発を手がけるレベルファイブは、多くのメーカーが群雄割拠するゲーム業界において希有な存在だ。
代表取締役社長の日野晃博氏は、元々プログラマーとして当時出はじめていた3Dゲーム開発に従事。経験を積んだ後に独立し、レベルファイブを立ち上げた。1998年のことである。
その後、プレイステーション2(PS2)用ソフト「ダーククラウド」(発売:SCE)を2000年に発売し、続編もリリース。そして、2004年に発売されたPS2用ソフト「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」(発売:スクウェア・エニックス)の開発を担当したことにより、レベルファイブの名前は全国区となった。
デベロッパーで確固たる地位を築いたレベルファイブは、2007年2月にニンテンドーDS用ソフト「レイトン教授と不思議な町」でパブリッシャーとして参入。11月には続編「レイトン教授と悪魔の箱」もリリースし、2作合わせて166万本以上の出荷本数を記録(2007年12月現在)するなど、パブリッシャーとしても頭角を現しつつある。
現在はニンテンドーDSで自社タイトル「レイトン教授」シリーズ、「イナズマイレブン」を開発しつつ、PLAYSTATION3(PS3)用ソフト「白騎士物語」やニンテンドーDS用ソフト「ドラゴンクエストIX」などの大作ソフトの開発を手がけている。
デベロッパー、パブリッシャーという2つの顔を持つレベルファイブは、現在のゲーム市場をどう見ているのだろうか。デベロッパーとして、パブリッシャーとして、それは違ったものに写っているのだろうか。
レベルファイブ代表取締役 日野晃博氏に聞いた。
僕の視点から業界を分析すると、変化の途中だと思っています。
一つは据え置き型ゲーム機が混とんとしている状況の中、それらにどう対応していくのかが難しくなっていると思います。
それでいてPS3という大本命だったハードでは、すごいマシンなだけに作るのが難しいという状態です。それらを鑑(かんが)みると、現在の状況は最先端のゲームを作ることそのものが難しくなっていると思います。
でも、僕らにはやれることが2つあります。一つは将来のために据え置き型ゲーム機をしっかりと作っていくことで、これはどうしても必要なことです。
そしてもう一つは、新しいゲーム、新しいシリーズを立ち上げることです。
僕は、この混とんとしている状況はものすごいチャンスだと思っています。それは、一番低予算で作ることができるニンテンドーDSというハードウェアが、一番シェアを持っているという状況だからです。
一番安く商品が供給できるハードウェア(携帯機)がナンバー1の地位にいるということは、これまでのゲーム業界では本当に珍しい状況です。
それはある意味、新しいゲームを作り、新シリーズを立ち上げるのには、すごくいい時期だと思います。つまり、チャレンジをしてもリスクが非常に少なくできるということですね。
弊社でも「レイトン教授」シリーズや「イナズマイレブン」を制作していますが、新しいゲームを世に送り出すというタイミングとしては、今はすごくいい時期といえるかもしれません。
将来のために据え置き機の研究開発を行い、しっかりとした商品をリリースしていくことは大変重要だと考えていますが、今、ビジネスとして成り立ってゲーム業界を生き残っていくためには、現在一番プラットホームとして大きいニンテンドーDSというハードウェアに、どのようにアプローチをかけていくのかというのは、今後も重要になっていくと考えています。
そして、次の10年を生き残っていくために、この時期を利用して新ゲームのフランチャイズ開発をしなければならない。新しいシリーズをここで生み出しておけば、それは据え置き機でも展開できるでしょうし、今後も長くシリーズをつづけていくことができると思います。
ソフトウェアメーカーとしては、仮にどこかのプラットホームが市場を寡占化したとしたら、新しいゲームはそのハードウェアで作らなければなりません。
ただ、新しいゲームを作るということは、実験的な要素もすごくありリスクも高い。面白いゲームができるかどうかも分かりません。失敗の可能性も高い訳です。
でも、現在は高い開発費や長い時間をかけなければ商品のレベルにいかない据え置き機ではなく、開発費としても期間としても、あらゆる面でチャレンジがしやすい携帯機がトップシェアを握っています。
そこに向けて、新しいゲーム、シリーズを開発するということは、ゲームメーカーとして非常に有効なアクションだと思います。そして、それを僕らは今やるべき事だと思い進んでいる感じです。
「ドラゴンクエスト」もファミコンだったからこそあれだけのボリュームで作り、人気商品になった訳ですが、ファミコンだった「ドラクエ」は「ドラクエ」というブランドを作れたからこそ、PSやPS2、その他のプラットホームに持っていっても圧倒的に売れるという状況となりました。ブランドのあるタイトルでは、売れるという状況はハードウェアが変わっても変わらない訳ですね。
それは今、ニンテンドーDSで開発したタイトルが資産として、今後ほかのゲーム機でも花を咲かせることができるということです。
ただ、その第1の作品を作るということが非常に大変なことなので、僕は今やるべきだと考えています。
業界的にはいろいろとつらい状況もありますが、僕はチャンスが眠っているタイミングだと思っています。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス