アーケード用レースゲーム「セガラリー」や音楽ゲーム「Rez」、音と光の電飾パズル「ルミネス」など数多くのヒットゲームタイトルを作り続けてきたキューエンターテインメント代表取締役社長CCOの水口哲也氏。最近ではSecond Life内の仮想都市「バーチャル東京」の総合プロデューサーも務めている。
既成概念にとらわれることなく、新しいものを作り続ける秘けつとは一体何なのだろうか。水口氏に話を聞いた。
日大芸術学部で出会った武邑光裕先生の「メディア美学」に影響を受けました。卒業する頃になって、言葉や文化、国境や人種に縛られず、何かを創作、表現できるフィールドはないかな、と探していたんです。そのときに、ふと突然、「ゲーム」というフィールドが目に入ってきた。
元々、自宅には家庭用ゲーム機は置かなかったし、まさか自分の仕事にするという発想はまったくなかったんです。でも、考えてみると、11歳のときに友達の家で初めてアタリの「ポン」を見たときから、ゲームセンターとかで日常的にゲームには触れていたし、メディア美学の観点から見ても、いくつか興味をひかれるコンテンツがあった。それで、ちょっと飛び込んでみようかな、と思ったのがきっかけです。
1990年を過ぎた頃、世界では東西の冷戦も終わって(デタント)、軍事系のテクノロジーがエンターテインメント産業に降りてきたんだよね。ゲーム業界にリアルタイムCGが入ってきた。全世界でヒットするようなゲームを作れ!っていわれてね。そこでフッと浮かんだのがラリーだったんです。
まだ日本では知られていませんでしたが、ステッカーチューンされた市販の車が、森や街や砂漠を走り抜けるWRCラリーは欧州でF1以上に大人気でした。それをモチーフにしたのがセガラリーで、ゲーム史上、初めて実際の車を使ったゲームになりました。最終的には、「セガラリー スペシャルステージ」という、モーションライドのときに使ったモーションベースの上に本物の車(トヨタ・セリカ)を載せた巨大なアトラクションを作りましたが、それは自分の中で大きな達成感がありましたね。
ただその瞬間に、その先を考えるようになりました。ゲームの作り方はわかってきたけど、リアルを追求していくような、エンジニアリングのような方向性に少しずつ疑問を抱きはじめていたんです。自分はエンターテインメントがやりたいと思っていましたからね。
ちょうどそのときに、セガの役員から家庭用ゲームを作ってみないか、という話があって。女性も含めたカジュアルゲーマーを取り込んで、もっと多くの人に楽しんでもらえるようなゲームを作ってくれ、と。それで始めたのが、スペースチャンネル5かRezという作品です。
1981年かな? 僕が16才のときにMTVの放送が始まった。音と映像の新しい表現に、毎日興奮していました。ピーター・ガブリエルや、A-ha、アート・オブ・ノイズとかニュー・オーダー、マドンナ…… 新しい表現がTVの向こうからどんどんやってきた。その影響が強くて。そのような音楽と映像の融合表現というのが、自分のベースになっているんです。
いつかチャンスがあったら、音楽と映像をインタラクティブに表現してみたいと思っていたけど、僕がセガに入った頃は技術的に無理だった。それが、「未来のゲーム」のひとつだったのかも。だから僕の中では技術が成熟するまで、ある意味“封印”していました。それがドリームキャストやPlayStation 2というプラットフォームの登場で変わり始めた。その封印が解けてスタートさせたのが、Rezであり、スペースチャンネル5なんです。
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