成長著しいニュース集約サイトとその問題点

文:Caroline McCarthy(CNET News.com) 翻訳校正:向井朋子、福岡洋一2007年08月21日 17時57分

 ニューメディアに詳しいJeff Jarvis氏によると、デジタル時代に入って起きたさまざまな現象により、ニュース報道とその消費の様相が変わってきているが、そうした現象のなかでも特に重要だと考えるべきなのは、地味なハイパーリンクだという。

 「ハイパーリンクはすべてを変化させた」と、メディア批評サイト「BuzzMachine」と政治ブログ「PrezVid」を運営するJarvis氏は主張する。同氏は「自分がいちばんうまくやれることをやり、あとはリンクせよ」という標語を掲げながら、読者にリンクをクリックさせて、さらに多くの情報が得られるどこか別の場所へと導く力を持つことにより、ニュース報道は一段と高い効率性を獲得できると説明している。かつて新聞社は、自社で抱える記者に記事を書かせる代わりにAssociated PressやReutersといった通信社から配信された記事も掲載するようになったが、現在起きていることは、いわばそうした変化の21世紀バージョンなのだ。一方でハイパーリンクは、ニュース集約機能という純粋にWeb 2.0的な現象の背後で、その基礎を支えてもいる。

 印刷メディアを長年手がけてきたJarvis氏は、ニュースの将来の姿として情報の集約に大きな期待をかけている。Jarvis氏は新興企業Daylifeに出資し、パートナーにもなっている。Daylifeは、ニュースの話題を求めてインターネットをクロールして集めた情報を整理し、コンテンツや内容にしたがって分類する。関心を引きそうな視覚化を行うことも多い。「部分の総和以上にあなたは賢くなる」と、Jarvis氏はDaylifeの「すべてを集める」戦略について説明する。「大勢の編集者たちの知識を集めて1カ所にまとめると、価値の高いものになる」

 こうした手法は最近生まれたものではない。ウェブ上の他のニュース記事へのリンクを集約しているサイトとしては、2002年にベータ版が公開された「Google News」が、最もよく知られていると言っていいだろう。編集者が記事を選択するニュース集約サイト「Huffington Post」が開設されたのは、2年以上前だ。しかし、時事ニュースの配信に関するこうした手法は、明らかに今なお成長し続けている。たとえばつい先頃も、新しいニュース集約サイト「Newser」のベータ版が公開され、ユーザー投稿によるニュースコミュニティー「NowPublic」が1000万ドルの資金調達に成功している。多くの場合、情報集約の手法はサイトによって大きく異なる。(OriginalSignalのように)RSSフィードで自動化しているサイトもあれば、アルゴリズムによる自動化を採用しているところもある。編集者チームの手作業で選択したリンクを掲載するサイトもあれば、(NowPublicやdiggのように)ニュース記事、マルチメディア、コメントを完全にユーザーからの投稿に依存しているサイトもある。

 しかし、アルゴリズム、編集者、あるいは「クラウドソーシング」のいずれで運営していようと、ニュース集約サイトは、事実上あらゆるウェブユーザーがニュースの情報源になり得るし、少なくとも情報を伝えることができるという、ますます混沌とするメディア風景の中に、ある秩序をもたらす1つの手段となっている。

 この数年間で、「主流」メディアと「市民」メディアというかつては明確だった区分がかなりあいまいになりつつある。2004年の米国大統領選挙のころを考えてみると、ブロガーたちは、あたかもスマトラ島の未開のジャングルで発見された新種の生物のように語られていた。現在では周知の通り、主流の報道機関がブログを開設したり(あるいは、最近、エコ系ブログ「TreeHugger」を買収したと報じられたDiscovery Communicationsのように、既存のブログを買収したり)、RSSフィードを自社のウェブサイトに統合したり、自社サイトへの投稿や協力を地域の読者に呼びかけたりしている。

 他方では、かつてゲリラ的だったブロガーたちが、以前は全国紙の記者などに限られていた報道関係者の証明を入手したり、トップクラスの知名度や、大手メディアの拠点における第一級の肩書きさえも獲得したりするなど、ジャーナリストの地位を駆け上っている。「Wonkette」のブロガーだったAna Marie Cox氏がTime誌のワシントン特派員になったのは、その一例だ。

 ニュース報道の環境が本質的に大きなグレーゾーンということもあり、ハイパーリンクベースのニュース集約サイトは、ある種の共通した基準を作り出す。diggの上位10件として掲載されるリンクでは、結局のところ、情報の出どころがInternational Herald Tribune紙か、ソーシャルネットワーキングサービス「MySpace」上の個人ブログの投稿か、といったことは問題にされない。diggの大規模で熱心なユーザー基盤が、ある記事を数千diggポイントに値すると見なせば、その記事は人目に触れるようになる。同じように、面白ニュースを扱う「Fark.com」も、奇妙で風変わりなニュースというサイトの基準に合っていれば、国際的な出版社の記事だろうが名の知れないローカル新聞のウェブサイトの記事だろうが、同じ扱いで掲載する。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]