就任から2年--マイクロソフトのターナーCOOに聞くソフトウェアプラスサービス戦略

文:Ina Fried(CNET News.com)  翻訳校正:吉井美有2007年07月25日 08時00分
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 Kevin Turnerの蜜月期間は過ぎ去った。

 MicrosoftのCOO(最高業務責任者)は、同社の経営陣では新顔だった。

 だがもう新顔ではない。就任から2年、いまCOOを取り巻く状況は緊迫している。Microsoftの財政は潤沢だが、旧来のパッケージソフトウェア事業に加えてオンラインの世界でも販売スタイルを確立する必要に迫られている。Turner氏の職務のひとつに、パートナーを納得させる材料の整備がある。パートナーは多くの場合同社製品の顧客との接点になっており、Microsoftは顧客を置き去りにすることはないだろう。

 Microsoftの既存の事業にサービスモデルを融合させるのは簡単なことではない。同社がWindows LiveやOffice Liveに代表されるオンラインビジネスソフトウェアを立ち上げ、GoogleやSalesforce.com、その他大勢の競合企業に遅れをとらずに進むにあたっては、WindowsとOfficeファミリの収益パイプラインを乱さないよう注意を払う必要もある。

 Microsoftのパートナー向けカンファレンスとして最大規模のものが先週デンバーで開催された(編集部注:2007年7月10日から12日にかけて開催されたMicrosoft Worldwide Partner Conference 2007を指す)。Turner氏は、2006年以降の成果と現時点での課題、同社製品の利用者の実質半数しか正規にソフトウェアを購入の代価を支払っていない現状についてNews.comに語ってくれた。

――1年前は、フレッシュマンのCOOでしたね。あれから1年が経過しましたが、今でも驚きの対象となっていることは何でしょうか。引き続き取り組んでいることや、当初考えていたよりもよかったこと、悪かったことを教えていただけますか。

 成功というものに対して、子会社を含む全体で共通の定義を持つことに関しては、かなりの前進があったと考えています。共通のスコアカードや目標シートがあって、どんなふうに報酬が決まるのか、また業績はどんなふうに評価される(された)のかを同じ枠組みでとらえることができるのは非常に快適なことです。ささいなことと思われるかもしれませんが、世界各地に総勢8万人の社員がいるのですから、仕事をする基盤として共通の枠組みを持っていなければ皆がばらばらのレンズで物事を見るようになるでしょう。企業の業績は、執行の観点、つまり業務遂行の卓越性という観点からとらえるもののひとつですが、こうした点から考えると非常に大きな違いがありますし、今期の第1-3四半期の業績にもその差は現れています。

 わたしは、Microsoftは以前からイノベーションを信じてきた企業だと思います。また、業務を遂行するための卓越した技能を習得している会社だとも思っています。習得は終わったのではなく、今でも学習サイクルを回し続けていて、このことをわたしは誇りに思っています。学習の継続において大きな前進を遂げており、変化に適応しています。

 こうした業務改善がイノベーションを妨げるのではないかと考える人もいます。しかし、偉大なチームはすべて偉大な規律を持っています。うまく使えば、規律が熱意を損ねることはありません。規律は、自分たちがやりたいことを実現する原動力になってくれます。ここにイノベーションが確立されるのです。製品サイクルにもそれは現れています。話を戻すと、例えばSQL ServerやVisual Studioの新バージョンが形のある成果です。Windows Server 2008も控えています。これらは、良好なサイクルで(次のバージョンを)市場に提供することに大きな成功を納めている製品の例です。このサイクルを続けることができれば、パートナーが勝ち、顧客が勝ち、ビジネスのエコシステム全体が勝つのです。ですから、これがセオリーなのです。われわれが取り組んでいることはこれですし、これ自体楽しいことです。わたしは自分の仕事が大好きです。

――製品を定期的に発表することについて予見可能性を高めるというお話がありました。最近の調査結果によれば、ソフトウェア保証(Microsoftのソフトウェアライセンスプログラム)は大企業顧客にとってはあいまいな点が多く、製品の発表が定期的でないことが契約を検討するうえで大きな障壁となっているようです。製品ロードマップが見えず、支払った分に見合うものが得られるという確信を持てないのです。これについてどのようにお考えですか。

 そうは考えていませんし、市場の顧客からそのような声は聞いていません。製品出荷予定の再設定をそういった問題とは思っていません。しかし、製品の定期的な出荷はわれわれの責務です。Steve Ballmerは昨年こうした観点から「もう二度と二度と二度とVistaのような遅れは出さない」と発言しています。人は、何を言うかよりも何をやるかに大きな注意を払うのだとわたしは思います。そして、2008会計年度のイノベーションの成果も好調に市場へと出始めています。約束通りに実行しなければ、その価値を認めてはもらえないでしょう。われわれにできることは、イノベーションを続ける能力があるということを示し続けることと、イノベーションを信じることです。

 また、投資を増大させている企業はありませんし、知財を市場に売り込もうという動きは増えていません。実際そうなのです。他のテクノロジ企業でわれわれと同じようなやり方でイノベーションに取り組んでいるところはありません。

――Microsoft製品のバージョンがどんどん多様化しています。これは顧客の要望に基づいたものなのですか。

 (よしあしは)顧客が判断することです。パートナーの苦労は増えます。しかし、大半の顧客は今までとはちがう製品構成を求めています。これまでとは違う機能性か価格設定、あるいはその両方を志向しています。われわれは顧客の声を聴いて彼らが向かっている先を知ります。その方向性がわれわれの製品構成の帰着するところなのです。

 他方、ライセンスプログラムには実をいうと大々的に変更を加えています。それまで107あったライセンスプログラムを23種類に統合しました。「ライセンス体系を簡素化するのはいつですか」と聞かれますが、これについて言えば、わたしの下でワールドワイドライセンシンググループを率いるJoe Matzに全権を委ねています。彼はライセンスを劇的に集約しました。これにより、ライセンス体系に対する顧客満足度も劇的に向上しました。パートナーもライセンスの簡素化を求めています。ライセンスに関しては制度を大きく変えましたが、われわれはまだ長い道の途中にいます。

 みなさんに知っていただきたいことは、Microsoftはみなさんのお考えを聞く意思を持っているし、改善し、前に進んでいるということです。今よりよくなりつづけたいと思っているし、パートナーからのインプットが必要なのです。彼らは多大な情報をわれわれに提供してくれますし、彼らからの情報が必要です。今日(イベントで)何度かお話しているとおりです。

――今年のロードマップにはどんなことがありますか。現時点で最優先の課題は何でしょうか。

 確実に顧客を獲得していくことです。これにはマーケットシェアやLinuxのこと、われわれが市場を通じて顧客に価値を提供しているという確証を得ることなども含まれます。顧客に心を配ることを習慣づけています。これによりわれわれの競争も前へと進みます。また、パートナーを十分支援して、われわれの競争を有利に進めることもしています。パートナーはわれわれを代表しているからです。顧客は、購買行動によって何に賛同しているかという意思表示をします。信頼されるアドバイザーであることは、IT人員の意思決定過程において今まで以上に重要なことです。われわれが推進している顧客満足度とパートナー満足度を向上するための取り組みを続けていきたいと思っています。

 事業の成長を考えると、新興市場には巨大なチャンスがあります。例えばBRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国を考えてみると、これらの市場で事業をどうやって拡大させるかを考え出したり、十分配慮したやり方で海賊版ソフトウェアへの対策を進めたり、ハイパフォーマンスクラスタコンピューティングを市場に提供して販売につなげたりすれば、大きなチャンスにつながります。こういったことや、新興市場でどれだけ好調に事業を展開するかを考えると、ソフトウェアとサービスを融合させたOffice Liveという新事業を成長させる絶好の機会なのです。ここでわれわれにとって新しい挑戦になるのは、パートナーを通じてわれわれの事業を拡大させることです。

 最後に挙げる最も重要なものは社員です。実際に物事を実現させて、価値を作り出し、顧客に配慮し、ロードマップを伝えていくのは、いつも社員なのです。

 これに関して常に考えることは、われわれは適切な社員を擁しているだろうかということです。われわれは適切なチームを組めているだろうか。彼らを育てたり訓練の機会を設けたり、手を貸したりするためにわたしにできることはないだろうか。彼らがわたしに求めていることは何だろうかと考えています。

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