NASA開発の「オンデマンド水素生成装置」、燃料電池車の救世主となるか

文:Candace Lombardi(CNET News.com) 翻訳校正:緒方亮、長谷睦2007年03月29日 10時17分

 新興エネルギー企業のEcotalityは米国時間3月27日、代替エネルギー競争で水素燃料を強力に後押しする可能性を持つ、画期的な発表を行った。米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)が開発した新技術を採用しているのとのふれこみだ。

 その発表によると、Ecotalityはマグネシウムと水を反応させて、水素燃料を発生させる装置「Hydratus」の試作品を作成する計画を立てているという。この装置では、燃料電池を搭載した自動車の必要に応じて、その都度水素が生成される。

 JPLが開発した新型のHydratusは、大きさと重さは従来型と同じながら、従来比で2倍の走行距離を実現した。アリゾナ州スコッツデールに本社を置くEcotalityは2007年中にHydratusの試作品を発表する予定で、それまでの時間を使ってさらに改良を加えるつもりだと、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるJonathan Read氏は述べている。JPLはNASA傘下の研究所で、その運営はカリフォルニア工科大学が行っている。

 「オンデマンドの水素によって、水素(燃料)という素晴らしいアイデアが、素晴らしい現実へと躍進するだろう」とRead氏は話す。

 これまでも、米エネルギー省は代替エネルギー技術の研究を推進してきた。副生成物としては水しか出ない水素燃料電池を採用した自動車もその1つだ。しかし、大規模な実用化について、水素燃料はさまざまな困難を抱えており、この克服は不可能ではないかと批判派の多くが指摘している。

 こうした懸念としては、以下のようなものが挙げられる。まず、燃料用の水素を作り出すには大量の電気が必要だ。また、水素燃料電池を使った車は走行距離が短く、すぐに燃料補給が必要になる。加えて、米国には水素燃料のためのインフラが整っていない。しかも、水素を安全かつ効率的に輸送するのは容易ではない。従来の方式で水素を生成すると、温暖化の主因の1つとされる二酸化炭素が大量に発生する点も問題だ。

圧縮水素システムに未来はないのか

 しかし、EcotalityのRead氏は、従来の生産方法や貯蔵方法(圧縮水素)を使った製品は、いずれにしても成長可能な市場を見い出せないだろうと指摘する。「今後、市場が一変し、淘汰を経た後になっても、圧縮水素を使ったシステムが広く使われることはまずないはずだ。生産、輸送、貯蔵にかかる費用が高いうえ、生産と貯蔵の形態としても効率が悪い」(Read氏)

 水素燃料電池車にHydratusが搭載されれば、水素燃料を生産して輸送のために圧縮し、水素スタンドに安全に貯蔵する必要もなくなるとRead氏は説明する。

 Hydratusがオンデマンドで燃料を作り出すシステムの詳細部分はJPLがその権利を所有しているが、Read氏の話によると、摂氏400度から600度のどこかでマグネシウムと水を反応させるのだという。Hydratusはマグネシウムの流れ制御に基づいた冷却システムを搭載していて、継続して生成反応を起こすためにもこのシステムが利用される。

 Hydratusと同じような発想を用いた装置として、新興企業のSigna Chemistryが考案したオンデマンド発電機がある。こちらはナトリウムをシリカゲルや結晶シリコンの粉末と合わせて起きる化学反応を制御し、水素を取り出す仕組みだ。

 Hydratusでは、反応の副生成物として、水のほかに粉末状の酸化マグネシウムが発生し、排出されるまで装置内に蓄積する。Hydratus搭載車用の水素スタンドでは、三つまたのポンプを使い、マグネシウムのペレットと水を補給し、同時に残留した酸化マグネシウムを吸い出すことになる。Read氏によると、このポンプは一般の消費者が扱えるほど安全で、Hydratusを満タンにするのに要する時間は3〜5分だという。

 使用済みの酸化マグネシウム粉末は99.8%リサイクル可能で、回収先の水素スタンドで再びマグネシウムペレットに戻して利用できる。酸化マグネシウムをペレットに変換する過程では電気が必要だが、Read氏によると、その量は水素燃料を作り出すのに必要な量よりずっと少ないとのことだ。つまり、マグネシウムはリニューアブル(持続的利用可能)な資源ということになる。

 「マグネシウムは地球上で4番目に多い鉱物性物質で、海からの採収も可能だ。ほとんどの国に存在し、入手できる。このシステムでは、一度使われたマグネシウムはリサイクルされてシステム内にとどまる。そのため、採取し続ける必要もない」とRead氏は説明している。

 EcotalityによるHydratus搭載バスの走行可能距離はおよそ155マイル(約250km)で、時間で言うとおよそ15時間は走行できる見込みだ。燃費は1リットルあたり約4.80ドル(ガロンあたり約17.50ドル)で、仮にスタンドが回収した使用済みマグネシウムをリサイクルするとすれば、この値は1リットルあたり約2.80ドルにまで下がる。

 走行可能距離に限度があることから、Ecotalityではこの技術を早期に導入する見込みが最も高い対象として、クリーンエネルギーの目標達成を目指す地方自治体や、FedExのように大量のトラックを擁する企業を考えている。同社はすでに、この技術に興味を示した世界各国の自治体との交渉に入っている。

 Read氏の話によると、水素技術を扱う企業、Hydrogenicsの駆動系を搭載しHydratusを積んだバスの価格は、1台およそ50万ドルになる見込みだという。これに対し、従来のエンジンを搭載したバスはおよそ30万ドルとのことだ。

 Ecotalityでは、自動車以外で使えるHydratusも開発しており、燃料電池との組み合わせで、家庭、携帯電話の電波塔、コンピュータシステムなどに非常用電源を提供するといった用途が考えられている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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