ハイブリッド車と代替エネルギーの両分野で、都市部の公営バスが注目を集めている。
街中を走行するバスは、走行距離が短く、停止と発車を繰り返す。この特質により、バスは低燃費車のさまざまなアイデアを試す格好の場として取り上げられるようになった。主要都市の中にも、低燃費型バスの導入を始めるところが出ている。
例えば、サンフランシスコ市は米国時間6月1日、ディーゼルエンジンとバッテリを動力源とするDaimlerChryslerのハイブリッドディーゼル車、「Orion VII」を56台注文したと発表している。同市では2007年までに86台のハイブリッドバスを導入し、営業運転に使用する予定だ。
また、DaimlerChryslerの取締役Andreas Renschler氏によると、ニューヨーク市は既にOrion VIIを数台購入しており、2006年中に1000台を稼働させる計画だという。トロント市も200台を発注している。
ほかにも、DaimlerChryslerはプラグインハイブリッドを導入した配送用車両「Sprinter」を使った実証実験をカリフォルニア州で開始している。プラグインハイブリッド車は、ほぼ電力だけで走行し、充電は夜間に通常のコンセントで行う。バッテリが車の中で大きなスペースを占めてしまう場合もあるが、燃費効率は、標準的な小型トラックや他のハイブリッド車に比べて著しく高い。
DaimlerChryslerは、ヨーロッパの30都市や中国で行われている水素燃料バスの実験にも参加している。
それにしても、なぜバスなのだろう?それは運行上の特質から、バスがこうした新技術の多くと親和性が高いためだ。標準的なハイブリッド車の場合、いわゆる回生ブレーキシステム(車の運動エネルギーが電気エネルギーに変換される)によって、ブレーキがかかると充電が行われる。街中ではブレーキが踏まれる機会が多いが、高速道路では非常に少ない。
また、路線バスはトップスピードまで速度を上げることがないため、電気エンジンの生み出す動力のうち、より多くを走行に使える。
「ハイブリッド車は長距離走行には向いていない。サンフランシスコからニューヨークまで移動するような場合には、メリットはまったくないだろう。だが、停止と発車を繰り返すような場合には理想的な車といえる」とRenschler氏は語る。
同様に、水素燃料車もバスの運行形態と相性がよい。通常、バスは長距離を走ることがないため、走行中に水素スタンドからはるか離れてしまうといった事態を恐れる必要がない。バスの走行ルートの近くに、水素スタンドを作っておけばよいのだ。また、水素燃料車は最高でも時速90マイル(約145km)までしか出せない場合があるが、これもバスにとっては問題にならない。バスの走行速度は、通常時速30マイル(約48km)程度か、それ以下だからだ。
DaimlerChryslerの関係者によると、同社は1969年にも、ドイツのシュトゥットガルト市の路線バス向けに水素バスを納入したことがあるという。「何の問題もなく走行していたが、当時はガソリン価格が安かったために誰も関心を持たなかった」と、この関係者は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス