Dellは1997年から2004年にかけて飛躍的な成長を遂げ、PC業界全体が不況に陥ったときも含め、競合企業から確実に市場シェアを奪い続けた。当時、Rollins氏は自信をつけ、2007年には年間売上600億ドル、2009年には800億ドルを達成するという目標を掲げた(さらにその後、Rollins氏は年間売上600億ドルの目標を2006年に達成できるとさえ述べていた)。
Dellは長年、市場でもっとも低価格PCを提供することを喧伝してきた。低価格PCの提供は製造工程の効率の良さに大きく依存して実現されたものだった。ところが、消費者がノートPCに好むようになるにつれ、競争力を維持するうえで価格は前ほど重要ではなくなってしまった。さらに同じ頃、同社はサポート技術者を海外の拠点に移転させていた。これを受け、Dellのサービスに対する消費者の不満は高まった。
一方で、HPやAcerは組織を再編し、より効率的な体制を作り上げ、巻き返しを図っていた。また、小売市場でPCの需要増加に便乗することにも成功した。
2006年になるとDellの成長は鈍化し、1984年の創業以来初めて市場の成長速度に追いつけなくなった。2006年後半にはHPにPC市場トップの座を奪われている。会計年度2006年の売り上げは600億ドルには届かず、559億ドルとなった。年商800億ドルという目標はすでになくなったように見える。
GartnerのアナリストCharles Smulders氏は、市場全体でPCの処理能力が向上し、価格が下落したことも、Dellのビジネスを圧迫したと指摘する。Dellはそれまで、プロセッサやメモリが増強されたアップグレードモデルを顧客に購入してもらうことで、売り上げを増やす戦略をとっていた。しかし、より安くPCを販売することを余儀なくされた今は、売り上げの成長が鈍化し、利益も減少している。
「今では、ローエンドと言われるPCでさえ、消費者のニーズを十分に満たすようになった。それに何といっても、ここ2〜3年のPC価格の下落が打撃となった」(Smulders氏)
個人向けPC市場におけるDellの立場も災いしている。Dellでは個人顧客からの売り上げは、総売上のわずか15%。テレビなどの個人向けデバイスを販売するなどの努力を重ねているが、この数字は何年も変わっていない。Shim氏は、個人顧客は実際に見て触った製品でないと、なかなか購入する気になれないことを指摘する。しかし、Dellは小売店でなく、ウェブや電話を使ったダイレクトセールスに依存している。
状況をさらに悪くしたのが、2006年8月に発表された大量のバッテリリコール。当時は家電業界で最大のリコールとして話題になった。原因はバッテリ製造元のソニーにあったが、インターネットに最初に出回ったとされるビデオで炎上していたのは、DellのノートPCだった。また、他社に先駆けてリコールを発表したのもDellだった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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