デル、間もなくCEO交代へ--後任は現社長のK・ロリンズ

 Michael Dellが、テキサス大学の寮の一室で、後に世界最大のPCメーカーとなるDellを起業してから20年がたつ。そして今、Michael Dellは新しいCEOに指揮権を明け渡そうとしている。

 16日(米国時間)、DellのKevin Rollins社長が年次株主総会でCEO職に正式に就任し、同社の取締役に選出される予定だ。今回の人事は、Dellが3月に発表した計画の一部である。

 IBMの最近の経営陣入れ替えは同社に大改革をもたらしたが、それと違いDellの場合、指揮権の移行はほとんど波紋を起こさないと考えられている。Rollinsは同社の業績が好調な間にCEOに就任する上、同氏は2001年の社長兼最高執行責任者(COO)就任以来、多くの業務を切り盛りしてきたからである。

 今回の人事は、Rollinsのこれまでの働きぶりを正当に評価した結果であり、Dellが同氏のさらなる貢献に期待していることの証しだと見る人も多い。

 これは、もっともなことだ。2000年後半から2年間続いたIT不況の時期でさえ、Dellは成長した。同社は、コスト削減に重点的に取り組み、研究開発費を押さえて、一般ユーザー向けのPC製造に集中した。品質についても高い評価を得ている。こうした要素の組み合わせがうまく機能し、成果を上げている。Dellは、第1四半期にHewlett-PackardからトップPCメーカーの座を奪うまでに成長した。また、過去10年間黒字を維持している。

 51歳のRollinsは、Dell入社前はBain & Co.で元バイスプレジデント兼パートナーを務めていた。同氏は、今後多少の路線変更を行うには違いないが、標準的な部品を使いながら低コストで商品を製造し、市場への新規参入を有利にするという戦略を今後も支持するだろう。また、企業及び個人ユーザー向けのPC市場での取り組みも継続するだろう。同社の現在の目標は、企業向け市場では、サーバやストレージシステムをこれまでより多く売り上げ、プロフェッショナルサービスを拡大することだ。一方、個人ユーザー向けにはPCやその関連商品(テレビおよびプリンタなど)を提供することに力を入れている。

 CEOが交代しても、創業者のMichael Dellは依然として相当の影響力を行使するだろう。これまでも、Dellが戦略的なイニシアチブをとり、Rollinsが日常業務の運営を切り盛りしてきた。Dellは会長職に留まり、同社の「二人三脚」体制を継続する。

 Technology Business ResearchのアナリストBrooks Grayは、Rollinsについて「Michael Dellと結託して会社を運営している」と述べる。「Dellはこれまでと同じ道を歩み続けるだろう。これが、IBMにおける(Lou) Gerstnerから(Sam) Palmisanoへの交代、そしてPalmisanoが取った迅速な行動と大きく違うところだ。(Rollinsの指揮下で)Dellが世間を驚かす行動に出ることはないだろう」(Gray)

 PalmisanoはIBMのCEOに2002年3月1日に就任し、その後すぐに行動を起こした。オンデマンドを強調する戦略を打ち出したり、PricewaterhouseCoopersのコンサルティング部門を買収したりしたのはPalmisanoだ。また、従業員の解雇や、ハードディスク部門などの不採算事業を整理してコストを減らした他、今年に入ってIBM Microelectronicsをサーバグループと統合するなど、事業の再編成を実施した。

トップの座を守れ

 Dellの位置付けはこれと大きく違う。同社はこれまで競合他社から市場シェアを奪うことでPC市場の不況を乗り越えた。不況下でも同社は、低コスト生産のおかげで自社のPCおよびサーバに安い価格を設定することできた。これが功を奏し、同社は市場シェアを伸ばし、挑戦的な価格設定にも関わらず利益を上げることができた。そしてほかのPCメーカーの多くが、シェアの低下を余儀なくされた。

 こうしたやり方のおかげで、DellはPCの年間出荷台数を過去3年間連続して約20%ずつ伸ばすことができたと、同社幹部はいう。Dellはビジネスをヨーロッパや日本、中国に拡大し、世界のPC市場におけるシェアを2003年には17%にまで伸ばした。これは、2001年と比べて4%増の数値だ。GartnerやIDCが発表したレポートによると、同社は第2四半期に大きく業績を伸ばしたという。これにより、同社は2004年前半、トップPCメーカーとして市場に君臨したことになる。

 また同社は、この間、記録的な売上と利益を計上した。同社の2004年度の売上高は414億ドルで、2003年度の354億ドル、2002年度の312億ドルから増加している。Rollinsは当初、年間売上高600億ドルという目標を掲げたが、この目標達成に向けて、同社は着々と歩を進めている。

 Dellの成長が、その努力やPC市場シェアの更なる拡大にブレーキを掛けることはない。しかし、年間売上高600億ドルという目標を達成するためには、DellはPC市場におけるシェアを30%近くまで引き上げなければならない。PC市場におけるシェアを1ポイント獲得するためには、売上高を年間20億ドル増やす必要があると同社はいう。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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