ワシントン発--AT&TとBellSouthの合併承認をめぐり、米連邦通信委員会(FCC)の論議において、均衡を破る1票を握ると見られる委員のRobert McDowell氏は、米国時間12月18日、倫理的な問題から投票には参加できないと語った。
2006年初頭にFCC委員に就任した共和党のMcDowell氏のこの決断は、現在では800億ドル以上と評価される合併案に、賛否の表明を避けてきた同氏のこれまでの姿勢を貫くものだ。McDowell氏は、FCCの委員就任の直前まで7年間、業界団体COMPTELの幹部を務めていたという理由で投票に参加するのを拒否してきた。COMPTELはBell系電話会社に競合する企業の側に立ってロビー活動を行っている。
18日午後にFCC本部で行われた記者会見の中で、McDowell氏は「政府の誠実性と公平性に関して国民の信頼を得るには、こういった状況では、政府倫理局(OGE)と私の倫理コンサルタントがそれぞれに示してくれる助言に耳を傾けたうえで、最終的には私の個人的な倫理観にしたがって、私が結んだ倫理的取り決めの条項を守る以外に選択の道はないことがわかった」と語り、「その結果として、この件を論ずるには私は不適格だと判断した」と結んだ。
McDowell氏によると、同氏はCOMPTELを離れるにあたり、FCCが扱う問題のなかでCOMPTELが関係するものについては、1年間は関与しないという倫理的取り決めに署名したという。COMPTELはFCCに対し、AT&TとBellSouthの合併案に反対する意見を表明している。McDowell氏は、民主党2人と共和党2人からなるあとの4人の委員に対し、論議の席に戻り、2005年のAT&TとSBC Communicationsの合併やVerizonとMCIの合併のような全会一致の合意にこぎつけるようにと促した。
「私がこの件から身を引いたことが、重要だが困難な議論を避ける口実になっているのではないかと心配している」とMcDowell氏は話す。
この合併に条件を付けるとして、どのような条件にするべきかについて、民主党2人と共和党2人からなる残りの委員がこう着状態に陥っているため、FCCはこの問題の決定を何度か延期している。米司法省反トラスト局は10月に無条件の合併を承認している。
民主党の2人の委員は、ネット中立性に関する条項を課することに特に関心を持っていると伝えられている。つまり、合併した両社がインターネットのコンテンツを優遇したり冷遇したりすることのないように求める諸規則だ。しかし、共和党の2人委員はこの考え方に反対している。
消費者擁護団体はMcDowell氏の決断にただちに称賛の声をあげた。
団体の1つ、Public KnowledgeのプレジデントであるGigi Sohn氏は声明の中で、「このようなきわめて重大な案件が、同委員が論議の過程に参加することによって浮上してくるであろう倫理的な疑問によって、焦点をあいまいにされることは避けなければならない」と述べている。Public Knowledgeは合併に対しネット中立性に関する要件を付けることに賛成している。
2006年中に手続きを完了させたいとして、FCC委員長であるKevin Martin氏は最近、FCCの筆頭弁護士に対し、2対2のこう着が予想されるなか、McDowell氏にこれを破る最後の1票を投じるよう求めることが、政府にとって最良の利益となるかについて検討するように求めた。
これを受けて、FCCの法律顧問Samuel Feder氏は、12月8日付けの覚え書きによって、McDowell氏に参加への同意をとりつけようとした。Feder氏によると、この決定は、FCCがWilliam Kennard氏の委員長当時に扱った同じような事例に基づくものだという。
McDowell氏は18日、Feder弁護士からの文書は要するに「何もない空中に投げあげられた倫理のコイントス」でしかなかったと語り、「よろいのごとく堅固な法律論を予想していたのだが、私が得たのは穴だらけのスイスチーズだった」と結んだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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