BellSouthの株主は、消費者や関連団体の反対にも関わらず、670億ドルでのAT&Tによる買収にゴーサインを出した。
3月に発表されたこの買収は通信業界に巨人を生み出し、もっとも有力な競合企業であるVerizon Communicationsですら小さな存在にしてしまう可能性がある。
米国時間7月21日に実施された投票では、97パーセントの支持を得て買収が承認された。これは同社の発行済み株式の67パーセント以上に当たる。合意文書によると、BellSouthの株主は同社株1に対してAT&T株1.325を受け取る。
地域電話会社SBC Communicationsが長距離電話会社であるAT&Tを2005年に160億ドルで買収して以来、同社は米国最大の電話会社である。同社は買収完了後に社名をAT&Tに変更している。
買収によりAT&Tは、従来のテレフォニー事業やブロードバンド事業だけでなく、AT&TとBellSouthが共同所有するジョイントベンチャーCingular Wirelessの経営権を完全に握ることになる。
2005年のSBCによる160億ドルでのAT&T買収に反対した消費者団体らは、今回の買収にも関心を寄せており、通信市場での合併が進みすぎ、消費者の選択肢が狭められるのではないかと主張している。
The American Civil Liberties Union(ACLU)も眉をひそめている団体のひとつで、AT&Tが米国家安全保障局(NSA)に委任状や消費者の同意なく顧客情報を提供しているのではないかという訴訟がその理由だ。
BellSouth自身は、表向き政府の調査プログラムから距離をおいている。しかしACLUでは、AT&Tが政府のプログラムに参加していることによる訴訟が、BellSouthの株主に大きな投資リスクをもたらす可能性があると考えているという。いくつかの試算によると、合併後の会社が背負う損失は700億ドル以上に達する可能性があるというのがACLUの主張。
カリフォルニア州の連邦裁判所は7月20日、AT&Tや政府が「国家機密」特権に基づき棄却を求めていたAT&Tに対する訴訟について、開始することを許可した。
ACLUのTechnology and Liberty ProjectのディレクターBarry Steinhardt氏は、電話による記者会見で「両社はAT&Tに対する訴訟が却下されるものと考え、これを重視せず、忘れ去ろうとしているが、訴訟が却下されないのは間違いない。他の裁判所でも同様の前進があることを期待している。BellSouthの株主は結局、AT&Tの株主にもなってしまい、重大なリスクがある」と述べた。
ACLUはBellSouth株を400株所有しており、アトランタでの株主総会に参加して、Steinhardt氏がBellSouthの最高経営責任者(CEO)Duane Ackerman氏に、株主委任状で係争中の法的措置が公開されていないのはなぜか質問した。Ackerman氏は質問を却下し、最後には顧問弁護士に発言を譲って、その弁護士から、訴訟についてはAT&Tにおいて米証券取引委員会(SEC)の要件を満たす形で公開されていると伝えられたという。
同氏は「この回答は意味深いものだと思う。証券取引法のもとで、彼ら(BellSouth)には法的なリスクについて株主に説明する義務がある。この件は株主委任状で公開されるべきものだった。今日のように、軽々しく却下されるべきものではない」と述べた。
Steinhardt氏によると、株主委任状に訴訟の件を法的なリスクファクターとして含めず無視したことについて、株主の代表によるBellSouthへの訴訟が少なくとも1件、ジョージア州ですでに始まっているという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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