[午前10時45分更新] 米通信会社のAT&Tは米国時間5日、同じく旧地域電話会社のBellSouthを670億ドル相当の株式交換で買収することを明らかにした。これにより、業界第2位のVerizon Communicationsを大きく引き離す大規模通信事業者が誕生することになる。
現在のAT&Tは、地域電話会社のSBC Communicationsが昨年、長距離通信に特化していた旧AT&Tを買収して誕生(買収後に社名をAT&Tに変更)したもので、現在米西部および南西部を中心に13の州でサービスを提供している。
米国第3位の地域電話会社であるBellSouthとの合併により、AT&Tは新たに南東部の9州を加え、合計22の州でサービスを提供することになる。合併後の新会社は約7000万人の顧客を抱え、年間売上は1300億ドル規模になると見られている。
さらに、AT&Tは同社とBellSouthの合弁会社であるCingular Wirelessの経営権も完全に傘下に収めることになる。5400万人以上の契約者を持つCingular Wirelessは、全米最大級の携帯電話事業者と考えられているが、AT&Tは現在Cingularの60%を保有している。
AT&Tの会長兼最高経営責任者、Edward E. Whitacreは、「CingularをめぐるBell Southとの提携も、AT&T自体の経営も極めて順調で、AT&T Wirelessの買収後は特にうまくいっている。しかし、2つの独立した企業のままでは、いかにうまく提携していても、スピード、効力、対応の素早さ、効率の点で単独企業にかなわない」と声明のなかで述べている。
今回の合併は、昨年SBCとAT&Tによる160億ドルの合併に反対した消費者団体を騒がせることになりそうだ。これらの消費者団体は、通信市場の整理統合が進みすぎ、消費者の選択肢が皆無になってしまうことを恐れている。ただし、これまでのところ監督機関はその主張に耳を傾けていない。
その最大の理由は、地域電話会社同士が直接競合していないという点にある。各社はそれぞれ異なる地域でサービスを提供している。また、大型合併の支持者らは、各電話会社がテレビや高速インターネット回線に加え、電話サービスにも乗りだしたケーブル事業者各社からの厳しい競争に直面している、と主張している。
ケーブル事業者と電話会社間の競争は非常に激化しており、AT&Tと米国第2位の地域電話会社であるVerizonは、テレビ番組の配信サービス提供に向け、ここ2年間で数十億ドルを投じてネットワークの増強を進めている。Verizonは、テキサスやマサチューセッツ、バージニア、フロリダなどの各州の一部の地域で、すでにテレビの配信サービスを行っている。一方、AT&Tもテキサス州で試験サービスを始めており、年内には提供エリアを拡大する予定となっている。
Whitacreは買収を発表した同社のプレスリリースのなかで、今回の合併を「必然的なもの」としている。
「この合併は、必然的に考えられる次の一手であり、AT&TとBellSouth両社の顧客および株主にとって大きな価値を生み出すだろう。これまで繰り返してきた統合や、Cingular Wirelessの設立、そしてYellowpages.comの運営を通したBellSouthとの密接な協力の経験を踏まえて、われわれはこの合併を成功させることができると確信している」(Whitacre)
今回の買収は、業界全体に影響を及ぼすことになりそうだ。たとえば、VerizonはQwest Communications(現在業界第4位で、やはりBaby Bellsの1社)買収の検討を余儀なくされる可能性がある。
Verizonは昨年、SBCによるAT&T買収の発表を受け、長距離通信事業者のMCI買収に名乗りを上げたが、これに対して、西部14州で固定電話サービスと高速インターネット回線を提供するQwest CommunicationsもMCIの獲得に動き、両社は買収合戦を繰り広げていた。最終的には、Verizonが84億4000万ドルを支払ってMCIを獲得した。
AT&TによるBellSouth買収の動きは、Verizonにワイヤレス分野への参入を余儀なくさせる可能性もある。同社は現在、欧州のVodafoneと共同でVerizon Wirelessを保有している。VerizonのCEOは、Vodafoneの保有するVerizon Wirelessの株式(全体の45%)を買収することに関心があると繰り返し述べてきている。
AT&T--BellSouthの買収条件は次の通り。BellSouthの株主は、BellSouthの普通株1株に対してAT&Tの普通株1.325株を取得する。AT&Tの同3日の終値に基づいて計算すると、今回の買収は、BellSouthの普通株1株が約37ドル9セントに相当する。これは、同3日のBellSouth株の終値の17.9%増しであり、買収額は約670億ドルに相当する。
なお、AT&Tによると、この買収は両社株主と監督機関の承認待ちとなっており、12カ月以内に完了する見通しだという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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