サンフランシスコ発--Intelは、コンピュータメモリの販売事業を再開するのだろうか。同社の最新チッププロトタイプに盛り込まれている取り組みの1つが製造段階に入れば、再開の可能性もあるのである。
Intelは米国時間9月26日、今週当地で開催されているIntel Developer Forum(IDF)で、80コアプロセッサを披露した。同チップの最大の特徴は、各コアが、TSV(Through Silicon Vias)と呼ばれる技術によって、256Mバイトメモリチップに直接接続されている点だ。
Intelの最高技術責任者(CTO)、Justin Rattner氏はNews.comがIDF期間中に行ったインタビューに答え、プロセッサコアに接続されたメモリだけで、コンピュータが必要とするメモリ全体を構成することも可能だ、と語った。TSVは80コアプロセッサだけでなく、さまざまなプロセッサにも使用可能だ。各コンピュータメーカーがシステムを構築する際、Intelからプロセッサを購入してメモリも入手できることになれば、現在のように他社からメモリチップだけ別に購入する必要はなくなる。
「つまり、(プロセッサとメモリチップを)セットで購入できるということだ」(Rattner氏)
1980年代には、Intelは世界最大手コンピュータメモリ(DRAM)メーカーの1社だったが、日本メーカーとの競争が熾烈化したため市場から撤退した(ただ、IntelはNOR型フラッシュメモリなど数種類のメモリの製造は続けている。これらのチップは一般に、DRAMと同様の使われ方はしていない)。
メモリとプロセッサとの直接接続は、性能面で大きな利点がある。現在、Intelベースのコンピュータに搭載されているメモリとプロセッサは、メモリコントローラを通じてデータ交換を行っているが、メモリコントローラはプロセッサに比べ動作速度が極端に遅い。その点が、コンピュータの性能向上を図る上で大きな障害の1つとなっていた。しかし、メモリコントローラの代わりにTSVを使用すれば、データ転送速度が大幅に向上するだろう。
また、メモリから送られるデータは、過密状態のポート内を通り抜ける必要がある。その点TSVは、数多くのポートを開くことができるという。TSVは全体として、同一シリコン上に80基のコアを搭載したことよりもはるかに注目すべき偉業だ、とRattner氏は語る。
またRattner氏によると、プロセッサコアはメモリとやりとりをする際、必ずしも直接接続されたメモリとやりとりをする必要はないという。コアは、各コアに組み込まれているルータによってコントロールされている高速リンクによって相互接続されているためだ。全般的に、80コアチップのプロトタイプにおける総メモリ帯域は1テラバイト/秒、つまり毎秒1兆バイトのデータ転送が可能だ。
TSVは、AMDを窮地に追いやる可能性もある。AMDはOpteronチップで大幅な性能の向上を実現したが、その大半はOpteronの統合メモリコントローラのおかげだ。Intelは同社のチップ上に統合メモリコントローラは搭載していない。
DRAM市場は依然として、チップ市場の中でも利益を出すのが非常に難しい市場の1つだ。従って、普通ならIntelがDRAM製造事業を再開することはまずないだろう。それにも関わらず、TSV技術はIntelを再びDRAM販売事業に引き戻す可能性がある。
しかし、Rattner氏によると、実現にはもうしばらく時間がかかるという。現在、80コアプロセッサに搭載されているメモリチップはSRAMだ。SRAMは、Intelが製造を続けているメモリだがコストが若干高い。そこで次の段階は、DRAMとTSVとがうまく連携するか否かを確認することだ。
また技術者たちは、プロセッサとメモリが同居可能なパッケージを考案する必要がある。一般にプロセッサはメモリよりも発熱量が高い。その点も考慮すべき要素の1つだ。パッケージの設計についてはあまり大きく取り上げられていないが、チップメーカーにとっては大きな試練だ。
Rattner氏は、「まだ研究段階」としながらも、「向こう数年間は、この技術の開発に積極的に取り組んでいく」と語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」