あのYouTubeが昨晩(米国時間9月18日)、米国第3位のレコード会社Warner Music Group Corp.とコンテンツの配信契約を結んだことを正式に発表した(同社ブログ)。このニュースはすでに、Reuters、APなどのニュース、そしてTechCrunchやメディアパブといった内外のブログで紹介されているが、整理の意味も込めて改めて紹介してみたい。
これまで著作権侵害のおそれやそこから生じるビジネスモデルの不在(広告収入をあてにしにくい)という問題を抱えつつ、テレビ番組や人気タレントのプロモーションなどさまざまな試みを続けてきたYouTubeだが、同社はこのほどWarner Musicと提携し、同レーベルが権利を保有する音楽ビデオを無料で配信することになった。ただし、上記のブログによれば、Warner Musicや所属アーティストとの条件の詳細が固まるまでに、なお数ヶ月がかかりそうだとのこと。さらに、この提携で「YouTubeのユーザーはビデオを投稿する際に 、Warnerの所有する楽曲を合法的に利用できるようになる。」(TechCrunch)という。
TechCrunchによると、この提携成立の背景には、YouTubeが「投稿(ビデオ)作品中に著作権の設定された音楽が存在することを自動的に探知する技術を開発した」という要因があり、それによって「Warnerは(ユーザーの投稿した)ビデオのアップロードを許可するか拒否するかを選択できるようになる」ほか、「(YouTubeから)Warnerに支払うべき著作権料も自動的に計算される」ようになるという。
一方、MSNBCに載ったAP伝「Warner Announces Deal With YouTube」によると、Warner Musicのほか、Universal Music GroupやSony BMG Music Entertainmentも、現在YouTubeと交渉を進めているとのことで、Warner Musicによる試みが成功すれば、動画共有サイトを通じた音楽ビデオの(広告付き)無料配信がいっきにデファクトスタンダードになる可能性もある。
さらに、「YouTube partners with Warner Music」というReutersの記事によると、この先進的なコンテンツID(検知)およびロイヤルティー報告システム」は今年末までには稼働するという。
YouTubeが開発したという「著作権付き音楽を自動検知し、それに応じて著作権する技術」は特に興味深いが、それと並んで注目すべきなのが、コンテンツホルダー側の態度の変化だろう。つい先日まで、違法コピー流通の温床として動画共有サイトを捉えていた彼らが、今度はそうしたサービスを積極的に活用しようとし始めている(Warner Brosで面白そうな変化が起こっていることについては前に「『ハリウッド2.0」』!--Warner Bros.から目が離せない理由」というブログに記した)。しかも、一般ユーザーが自社の資産であるコンテンツを「マッシュアップ」することさえ認め、それを通してネットワーク外部性をレバレッジするという戦略まで打ち出した。「コンテンツ」の提供から「(クリエイティブのための)プラットフォーム」の提供という方針の変化は、今後のメディア業界に間違いなく大きな影響を与えると思われる。
さらに、この週末にAppleとGoogleによる「iTV-Google Video」を通じた提携の可能性も浮上した。iTunes Storeで音楽ビデオを販売しているAppleにとっては、YouTubeで同じコンテンツが無料配信されてしまうと、それだけ自社サービスの影響力低下が懸念されることになりかねない。また、「Soapbox」という動画共有サービスを発表したばかりのMicrosoftが、この新サービスを先ごろお披露目したポータブルMP3プレーヤー「Zune」とどう組み合わせていくのか(それともいかないのか)など、ここへ来て、メディア関連の各社の動きに目が離せない状況になってきた。
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