チームラボはこれまで、複数のサイトの制作を受託してきた。その中で気を配ったのは、それぞれのページ内のコンテンツに、常に関連したコンテンツが表示されるようにしたことだ。例えば東京地下鉄(東京メトロ)とNKBが共同で運営する東京都内の情報を集めたサイト「Let's Enjoy TOKYO」では、ある店舗の情報ページには周辺地域の施設やレストラン、その地域に関わる投稿情報が載るようにした。
ほかにも、イザ!ではチームラボが開発したコンテンツマッチングエンジンを利用して、各記事に内容の近い過去記事を5本瞬時に選び出して表示する。
これらの取り組みの裏には、もはや階層構造に基づくリンクでは、ユーザーのニーズに対応しきれないという考えがある。
これまでのウェブサイトは情報量が少なかったため、階層構造がうまく機能していた。しかし、Web 2.0と呼ばれるこれからのインターネットの世界では、ユーザーが自由にコンテンツを作ったり、各サイトがAPIを利用して外部データを取得し、コンテンツを簡単に生成したりすることができるようになる。つまり、これまでとは比較にならないほどの情報量を、1つのサイトが簡単に持てるようになるのだ。
また、あるページにたどり着く方法も、サイト内のリンクだけではなく、検索サービスやブログのトラックバックなど多様化している。このような状態では、階層に基づいてコンテンツを表示するよりも、関連するコンテンツを同時に表示するほうが、ユーザーの利用は高まる。
「情報が超多様になるサイトのリンクは、コンテンツマッチで作られているべきだ」(猪子氏)
チームラボビジネスディベロップメントが6月に開始した検索サービスのSAGOOLも、同じように膨大な情報の中から、いかに人が好きなものに出会うかを考えた結果生まれたサービスだ。オモロアルゴリズムという独自のアルゴリズムに基づいて、人々が興味や驚きの意見を示したウェブページを抽出し、検索結果を表示する。アルゴリズムの詳細については明らかにしていないが、確率論や統計学をベースにエンジンを作り上げたという。
ここでチームラボが苦心したのが、いかに人の主観性を検索エンジンに盛り込むかだ。「主観的というと個人の話のように聞こえるけれども、例えばあるレストランの料理がおいしいというように、複数の人が共通して持つものもあるはず。そこを論理化したい」
「特に動画検索の世界では、客観的に正しいかどうかよりも、映像として面白かったり、綺麗だったりするものが検索結果の上位に来てほしいとユーザーは思うはず。だからこそ、主観性が重要になる」(猪子氏)
今後、同社が目指すのは世界に発信できる日本発のインターネット技術だ。「インターネット業界では、日本から海外に輸出した製品やサービスはほとんどない。ここを変えて行きたい」(猪子氏)
SAGOOLのような検索エンジンを開発するには多くの資金が必要となるが、チームラボは現在無借金経営で、ベンチャーキャピタルなどからの投資は受けていない。上場も「考えていない」(猪子氏)と公言する。
受託開発を中心に収益を上げており、特に出資を受ける必要がないというのがその理由。投資家との話し合いなど、資本政策に時間と労力を割くよりも、製品やサービスの開発に力を注ぎたい考えだという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「1→10」の事業化を支援する
イノベーション共創拠点の取り組みとは
日本のインターステラテクノロジズが挑む
「世界初」の衛星通信ビジネス
NTT Comのオープンイノベーション
「ExTorch」5年間の軌跡
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
すべての業務を革新する
NPUを搭載したレノボAIパソコンの実力
先端分野に挑み続けるセックが語る
チャレンジする企業風土と人材のつくり方