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大詰めWinny公判が突きつけたソフトウェアの明日 - (page 3)

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証拠として提出された書き込み

 検察側は論告で、次のように指弾した。

 「被告はfreenetのように『言論弾圧の下で使う』と言っているが、2ちゃんねるでは『freenetのようにどうのこうのという気はない』とも書いている。今回の事件が確信犯的犯行であることは明白で、侵害に利用されることをわかっていて配布したのは明らかだ」

 そして検察官は、数多くの2ちゃんねるdownload板での書き込みを証拠として挙げた。

 「個人的な意見ですけど、P2P技術が出てきたことで著作権などの従来の概念が既に崩れはじめている時代に突入しているのだと思います。お上の圧力で規制するというのも1つの手ですが、技術的に可能であれば、誰かがこの壁に穴あけてしまって後ろに戻れなくなるはず。最終的には崩れるだけで、将来的には今とは別の著作権の概念が必要になると思います。どうせ戻れないのなら押してしまってもいいかっなって所もありますね。」

 公判の被告人質問で、検察官は「あなたがこの書き込みをしたんですね」と聞くと、金子被告はこう答えている。

 「かなり前なので確定ではないですが、書いたかもしれないけど……あまり考えずに書いてますね」

 他にも47名義では、数多くの書き込みがあった。

 「著作権含むけど、それと知らない人が単にデータを中継しただけでも捕まるってのなら逮捕可能かもしれないけど、それってルーター使ってたら逮捕と同じなわけで、システム使ってるだけで無条件で逮捕可能にしないと、捕まえられんだろう」

 「あと作者の法的責任に関しては、情報公開を要請されるとか公開停止程度の勧告はありえますが、逮捕というのはまずありえないだろうと考えています」

 「このシステムでの法的な問題点ですけど、似ているのはやばいブツの運び屋と同じでしょう。システム利用者は自分が運んでいるものがやばそうなものであることは知っていますけど、それの詳細は知らず、依頼に応じて他人のところに持って行くだけなわけです。そして運び屋の仲介は複数人で、仕事を頼む方ものを受け取る方も、実は運び屋に化けていて誰から誰にブツの運搬が行われているのか途中の運び屋はわからないという状況に似ています。運び屋を捕まえることはできるけど、法的な責任はそれほど問えない可能性があるってことです。そして、運び屋と違い、警察が簡単に車止めて中身を見られない状況なわけです」

 先にも述べたように、検察側は7月3日の論告で、2ちゃんねる以外にもウェブサイトでの文章やメールのやりとりなど金子被告の言葉のやりとりを数多く提出し、次のように主張した。

 「これらの供述は参考人であったときから被疑者になったときまで一貫して整合しており、独自の発想による言葉は本人しか供述し得ないものであるのは明らかだ。そしてこれらの供述は、2ちゃんねるの書き込みやメール、ウェブに掲載した文章とも一致している。従って、主観的、客観的にも侵害を助長するために作成、公開されたものであることは明らかである」

 これに対して、弁護側は金子被告の警察への事情聴取は「捜査官の作文である」と反論した。この反論に対して、検察官は論告でこう断罪している。

 「一方、被告の法廷での弁解は虚偽に満ちている。『ひまつぶしでやった』『技術的検証のためだった』と言っているが、著作権侵害行為で満ちあふれている2ちゃんねるのdownload板で開発を進め、他の場所で検証している形跡もない。捜査段階で意図を供述しているのにも関わらず、『捜査官の作文』『警察官の言うことには従うものだと思ったからそう答えた』としか説明しておらず、虚偽と矛盾に満ちた供述を繰り返している」

かけ離れた著作権の理想と現実

 ふたたび私見を言えば、私は金子被告の「P2P技術が出てきたことで著作権などの従来の概念が既に崩れはじめている時代に突入している」という意見には全面的に同意する。また「将来的には今とは別の著作権の概念が必要になると思います。どうせ戻れないのなら押してしまってもいいかっなって」という発言についても、まったくもって同意見だ。

 しかしそうした考え方は、現在の著作権法の理念とは著しくかけ離れているのも事実である。現行の著作権法と著作権を守る国内システムは、現在ある著作権概念を守る方向に動いているわけで、それを崩壊させたうえであらたな概念を作り出そうというベクトルはきわめて弱い。そうであれば、現行の著作権保護システムを崩壊させようという動きは、どうしても法違反へと向かわざるを得ない。

 2ちゃんねるなどでの金子被告の書き込みを読めば、検察官が指摘するように、彼が確信的にWinnyを配布していたのは明らかなように思える。彼の発言は開発スタート当初から逮捕後まで首尾一貫していて、まったくぶれがない。それらの供述に対する「警察官の作文だった」という弁護側の反論は、まったくもって根拠が弱いといわざるを得ないように思う。

 金子被告は、つまりは圧倒的な確信犯だったのだ。新聞報道によれば、金子被告は逮捕後、「結果的に自分の行為が法律にぶつかってしまうので逮捕されても仕方ない」と供述していたという。そうであれば、彼は確信犯として罪は問われなければならない。

 しかし罪を問われるべきは、金子被告が確信犯的にWinnyを配布したという行為であると思う。先に述べたように、Winnyというソフトウェアそのもの、ならびにWinnyの開発という行為ついては、決して断罪されるべきではないように思う。しかし今回の裁判では、その配布行為とソフトそのもの、ソフトの開発の是非が分離されることはなく、不可分な一体とされてしまった。裁判の判決がどうなるかはまだわからないが、その一点において今回の裁判の流れは私にとって、きわめて残念な内容だったと言わざるを得ない。

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