Microsoftが1999年にオンライン決済システム「Passport」を導入した際、IT業界に大きな騒動が引き起こされた。同システムは、購入者がユーザー名とパスワードを1度入力するだけで複数の小売店サイトで買い物をすることを可能にするというものだった。
プライバシー擁護者たちはPassportに対して懸念を表明し、また複数の企業がMicrosoftのこの取り組みに対抗しようと結束したせいもあり、Microsoftは小売業者の参加を得られず、Passportの規模を縮小した。
Googleは米国時間6月29日、一度サインインするだけで複数の参加小売企業で買い物ができるオンライン決済システムとして「Google Checkout」の提供を開始した。Googleは、AdWordsを利用する顧客商店に対して、この決済システムを割引価格で提供している。また、Googleの検索サービスの利用者は、検索結果ページの広告に表示されたアイコンによって、その広告主の商店では速やかな買い物が可能であると判るようになっている。
Google CheckoutはアイデアとしてはMicrosoft Passportに似ているが、企業も違えば、時期も違う上、(少なくともまだ)プライバシーにまつわる騒動も起きていない。ここで、世の中は本当に、「邪悪なことはしない(Do no evil)」というモットーを掲げているGoogleを、独占禁止法違反の疑いで米司法省から提訴されているMicrosoftよりも信用しているのだろうか?という明白な疑問が浮かんでくる。
この疑問に答えるにあたり専門家は、MicrosoftがPassportを導入した時期はプライバシー論争の起こっていた時期であるということと、MicrosoftとGoogleでは技術の実装という点で大きな違いがあるということを指摘している。
Directions on Microsoftの上級アナリストであるGreg DeMichillie氏は、MicrosoftがPassportを導入した際に「電子プライバシー情報センター(EPIC)やその他の団体が大騒ぎをした」と述べ、「その騒ぎの多くは、Microsoftによる(Passportの)Windows XPへの統合に対するものだった」と説明した。
「(Passportが導入された)2001年には、米司法省がMicrosoftを(独占禁止法違反)で追求していた」(DeMichillie氏)
また、Passportはセキュリティ上の問題を複数抱えており、専門家はPassportに適切なセキュリティ保護策が施されていないということを非難していた。
さらに、Sun Microsystemsを初めとする企業は2001年にLiberty Allianceを結成し、「デジタル認証」に関して競合する取り組みを開始した。ここで重要なことは、それが単独の企業によってコントロールされるものではなかったということだ。
アナリストらによれば、この点に関していえば、コンシューマーはPassportの使用を強制されることを好まなかった上、企業はMicrosoftが顧客情報を一手に握ることを好まなかったという。
Passportは当初、Monster.comやeBayといった大手業者の参加を取り付けていた。しかし、2005年までにはそういった業者も参加をとり止めた。その結果、Passportの規模は縮小され、現在は単一のサインインによってMicrosoftのサービス群を提供するのみとなっている。これはまた、ウェブベースのサービスおよびソフトウェアに注力しようとするMicrosoftの最近の取り組みの一環である「Windows Live ID」として受け継がれている。
Microsoftの関係者に対し、この記事に関するインタビューを申し込んだが、受け付けられていない。
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