Googleは、新たなビデオ広告サービスで急速な展開を狙っているようだ。
同社は1月に動画をホスティングする「Google Video」のベータ版サービスを開始したが、その滑り出しは必ずしも順調とは言えないものだった。だが、自動入札システムを使い、アドワーズ広告を表示しているサイトにビデオ広告の掲載を可能にする新サービスで、Googleが巻き返しを見せるだろうと専門家たちは考えている。
「これは成功するだろう。ブランド力のある広告主の持つ多額の広告予算が、Googleの広告ネットワークに流れ込むことになる」と、市場調査会社JupiterResearchのアナリスト、Emily Riley氏は予測する。これが「次世代の」オンライン広告になるというのだ。
周知のとおり、Googleは検索結果に連動した形の広告を普及させ、さらにはこれを原動力に時価総額で約1150億ドルの大企業に成長した。Googleの売上は2005年は60億ドル超におよび、そのほとんどは検索結果のページや提携先のウェブサイトに表示される広告からの収入が占めている。
従来、Googleが扱うオンライン広告は、テキスト、Flash、画像ベースのものしかなかった。今回ここに、クリックすると再生される方式(Click-to-Play)のビデオ広告が新たに加わった。ただし、このビデオ広告はGoogleのオンライン広告を掲載している各サイトには表示されるものの、Google本体のサイトには表示されない。
新サービスでは、広告主が製作したビデオ映像をGoogleにアップロードし、Googleがそれをホスティングするが、いわゆる「サーバ利用料」は発生しないと、Googleの広告販売部門であるAdSenseの製品管理ディレクター、Gokul Rajaram氏は説明する。同氏によると、ビデオ広告の掲載に積極的、あるいは技術的に対応できるウェブサイトが不足しているため、多くの広告主がGoogleの広告ネットワークに掲載を希望しているそうだ。
「今すぐにビデオ広告に金を出そうとしても、購入できる掲載スペースがほとんどない。たいていは何カ月も前に売り切れているからだ」(Rajaram氏)
しかし、動画の扱いに関しては、Googleには時間をかけて学ばなければならないことが多々あると専門家たちは指摘する。
AccuStream iMedia Researchのアナリスト兼コンサルタントであるPaul Palumbo氏は、「ビデオ広告分野で既に実績を積んだYahooのように洗練されたサービスを、Googleが最初から提供できるとは思えない」と指摘する。「しかし、Googleにはこれまでも広告モデルに革新をもたらしてきた実績があるうえ、先行企業をもとに新たなサービスを構築できる」
一方、Piper JaffrayのSafa Rashtchy氏は、ターゲティングが鍵になると考えている。「Googleがビデオ広告のターゲット設定により、広告の効率をどれだけ上げられるかにかかっている。ビデオ広告は面白く人々の関心を集めるため、掲載されたウェブサイトの魅力は増す。あとは広告がサイトおよびユーザーの関心の両方にマッチしているかどうかだ」(Rashtchy氏)
YouTubeや口コミで広がるバイラルビデオの成功からもわかるように、ネット上で動画の人気が高まっていることは間違いない。
現在、オンライン広告市場全体のなかでも、ビデオ広告のシェア増加は著しい。JupiterResearchが2005年中ごろにまとめた値によると、米国におけるストリーミング媒体の売上は、2004年の1億4000万ドルから2005年には2億5100万ドルに上昇した。また2006年は3億4400万ドルにのぼる可能性があるという。これに対して、従来型オンライン広告の2006年の売上は88億ドルになると予測されている(同じくJupiterResearch)。
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