ソフトバンク・ヤフーによってリバンドルされる通信 - (page 2)

従来の通信事業者の壁を越える

 従来、通信事業者は自らコンテンツの提供サービスに関してきわめて限定的なスタンスを取り続けてきた。(ナンバーディスプレーが普及してはいよいよ明確になったが)通信というものは、発信(呼)者と受信(呼)者が相互に相手を認識していることを前提にして通話が成立するというものであり、番号案内など通話が成立するまでの支援の部分にこそ通信事業者は介在するとしても、通話の内容=コンテンツそれ自体には一切立ち入らないという「通信の秘密」が前提になっていたからだ。

 それがiモードの登場以来、様相が変化しつつある。急速に普及しつつあったケータイのブラウザデフォルトページ(いわゆる「玄関(ポータル)」だ)に、にわかに「メディア」としての価値が見出されてから、通信事業者による(カッコつきではあるが)コンテンツ提供がなし崩し的に始まってきているといっていい。

 しかし、依然としてそれはケータイの枠を出ることはなかった。逆に、携帯電話事業者が設定したスタートページから、任意に自分が好むISPが提供するスタートページに変更することも利用者の意思で可能に制度上はなっているものの、そんなことを知っている人は当然のごとくほとんどおらず、実質的には利用者は皆無だ。

 もちろん、通信事業者の関連ISPもPCなどからインターネット接続を利用するユーザー向けにポータルページを提供してきた。しかし、それらISPは、厳密にはインフラを提供する通信事業者そのものではなく、水平分離されたインターネット接続サービス提供者、いわゆるプロバイダであり、電話回線や光ファイバーとは別個に契約する必要がある。

 現在でもほとんどの場合、インターネットをめぐるサービスは、インフラやISPなどの技術/サービスレイヤごとに別契約のままだ。ましてや、ADSLなどでは、通信インフラ提供者(主にNTT東日本・西日本)、ADSL事業者、そしてISPの3社と個別契約をしなければならない。加えて、主要な接続機器であるPCのブラウザの選択とそのデフォルトページの設定も自由だったため、ユーザーエクスペリエンスとしてのインターネットの入り口=ポータルは「誰のものではない」状態に陥った。

 そこで、圧倒的な存在感を獲得したのはヤフーであり、その後その知名度を武器に、Yahoo! BBというブランド名で、ソフトバンクはブロードバンド接続サービスを開始した。それは、きわめて廉価であり、広帯域常時接続サービスであるというADSLという特徴のほかに、ADSLそのものとISP、そしてポータルをバンドルして提供するというユニークな形態を採っていた。

 このときにソフトバンクによる通信サービスのリバンドル(再統合)の試みは、始まった。その後、光ファイバでの接続サービスを展開するUSENなどがリバンドルしたサービスを提供し始めたが、前述したとおりNTTのインフラを用いる場合を中心に、依然として多くの場合はインフラとISPは別契約のままだった。ソフトバンクは新興事業者としては大きな成功を収めたものの、依然としてその流れそのものを変えたわけではなかった。

 一方、ケータイは独自に進化を遂げ、メディアとしてのケータイポータルページを抱え、インターネット類似のサービスを提供してはいたものの、それは事業者の「ウォールドガーデン(中庭)」サービスでありつづけた。アンバンドルを経てリバンドルへと向かう通信の大きな流れから独立し、ガラパゴス島の生態系のように、ただしその規模とはまったく異なる大きさをもって、別の存在であり続けてきたのだ。

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