ソフトバンクに買収されることが決まったボーダフォン日本法人。かつてはカメラ付き携帯電話や画像添付メール「写メール」を国内で初めて投入するなど市場で大きな存在感を持っていたが、Vodafone Groupの買収に伴う料金施策の失敗などで、最近ではシェアを落としていた。ソフトバンクは傘下に収めることで、グループの強みを最大限に活用し、新たな魅力ある携帯電話事業者として生まれ変わらせる考えだ。
ボーダフォンの国内携帯電話市場におけるシェアは2月末で16.7%と、1位のNTTドコモ(55.8%)や2位のKDDI(27.5%)に大きく水をあけられている。しかしソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、「5年後、10年後も3位でいるつもりはさらさらない」と話し、今後の施策として、ネットワーク、コンテンツ、営業力の3つを強化するとした。
まずネットワークについては、「ボーダフォンはつながらないという声が多かった」と話し、第3世代携帯電話(3G)を中心にエリアカバー率を高めていくことが課題だとする。
ただしバックボーンについては、ソフトバンクの基幹ネットワークを使えるため、コスト削減が図れるという。これまでボーダフォンは日本テレコムなど他社から専用回線を借りていたため、通信費用が大きな負担となっていた。
また、ソフトバンクの持つ固定回線とボーダフォンのネットワークを融合することで、FMC(Fixed Mobile Convergence)と呼ばれる融合サービスが提供できるようになる。
「NTTとKDDIは音声中心のネットワークでは立派なものを持っており、ソフトバンクには足りない部分もある。しかしデータコンテンツではほかのグループよりも先行している」(孫氏)
ヤフーとモバイルポータルで独占提携へ
コンテンツについては、グループ会社のヤフーの強みを最大限に生かす考えだ。Yahoo! JAPANはページビューが月間322億件、ユニークユーザー数が4200万人という国内最大のポータルサイトだ。この集客力を生かし、ポータルサービスにおける独占的提携も視野に入れているという。
「ドコモには5800の公式サイトがあるが、インターネットの世界にはけた違いのコンテンツが存在する。これらのコンテンツを携帯電話からでもスムーズに見られるようになれば、非常にエキサイティングなサービスになる」(孫氏)
このほか、グループ会社のTVバンクが持つ動画コンテンツや、MOVIDA ENTERTAINMENTらのゲームコンテンツなどを携帯電話に配信する計画も持っている。
営業体制については、ソフトバンクが持つ家電量販店へのチャネルやYahoo! BBの販売代理店、Yahoo! JAPANなどを活用していく。ただし、今回はYahoo! BBの販売のときとは異なり、「あまり泥臭いと『持っていて格好悪い』と思われるので、スマートに販売していく」(孫氏)とのことだ。
既存のユーザーにとって最も気になるのは、今後の料金施策だろう。ソフトバンクはYahoo! BBでADSLサービスの「価格破壊」を行い、低料金化を進めた実績がある。しかし、孫氏は「いま料金の話をするのは時期尚早だ」として、通信料金施策については語らなかった。
なお、ソフトバンクでは今後、ボーダフォンというブランドを新しいブランドに変更する方針だ。具体的な日程や新ブランド名については明らかにされなかったが、「今後半年から1年をかけて新ブランドを浸透させる」(孫氏)としている。
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