ヤフーはソフトバンクのボーダフォン日本法人買収に関して、1200億円を出資する計画を明らかにした。1200億円という数字は、同社の2005年3月期の連結決算の売上高にほぼ匹敵する。しかしPC向けインターネットの世界と同じように、モバイルポータル市場も制覇しようと目論むヤフーにとっては、決して高くはない「携帯キャリアの内輪への入場料」だ。
ヤフーはこれまで、モバイル向けのポータルサイト「Yahoo!モバイル」において、Yahoo!オークションなど約50のサービスを提供してきた。ヤフーによれば、Yahoo!モバイルは月間11億ページビューをほこるという。
しかしモバイルの世界では、ユーザーはまず「iメニュー」や「EZトップメニュー」といった、キャリアが運営するポータルサイトに接続し、そこからキャリアに認められた「公式サイト」に接続するのが一般的だ。キャリアは自社の競合となるポータルサイトを公式サイトとして認めないため、ヤフーのモバイルサービスでも公式サイトとなっているのはYahoo!オークションなど一部にとどまっていた。
こういったキャリアの姿勢に対し、ヤフー代表取締役社長の井上雅博氏は「現在のモバイルインターネットの世界は、キャリアに大きく依存している。今のモバイルインターネットはオープンではなく、ユーザーはインターネットの利便性を享受できていない。『もっとこういうことができたら』という思いがあったが、これまでは難しかった」と語る。
ソフトバンクがボーダフォンを買収することで、ヤフーはNTTドコモやauと同じように、ユーザーに対してキャリアとしての独占的なサービスを提供できる立場に就く。「モバイルポータルサービスをソフトバンクと共同で作り、キャリアの内輪に混ぜてもらいたい」(井上氏)
「これまでユーザーは主にPCからインターネットを利用していた。しかし今後はユーザーがいる場所や時間、シチュエーションに合わせて、いろいろな道具からインターネットにアクセスできるようにし、1人1人にとって便利なサービスを提供していく」(井上氏)
サービスは「T型」で提供
具体的なサービス展開については、「どういうふうにしたらより便利になるのか、これからチャレンジしていきたい」と語るのみで、詳しいことは明らかにしていない。ただし、すでに提供しているサービスについては、これまで通りほかのキャリアのユーザーに対しても提供していく方針とのことだ。
「Yahoo! BBで一度経験していることだが、広くインターネットユーザーに利便性を提供していきつつ、キャリアに近いからこそより大きな利便性を提供できる部分については、積極的に展開していく」(井上氏)。同社ではこれを「T型」と呼んでおり、広く水平にサービスを展開しつつ、特定のユーザーにはより深いサービスを提供していく方針だ。
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