この展開を進める一方で、ヤフーは自己反省もしている。ヤフーの検索に足りないものとして井上氏はまず「DiscoveryとRecoveryをサポートする機能がない」とした。Discoveryは、ユーザーが行きたい場所を発見することで、自分が見つけたい答えを導き出したい検索ワードを試行錯誤して見つける行為のことを指す。それをサポートする機能がないというわけだ。また、Recoveryというのは昔に一度は訪れたことがあるのに、それを思い出せずに再び探して訪れることをサポートする機能がないことだ。
さらに、ヤフーの検索にないものとして、検索インデックスやランキングに対するユーザーのフィードバックを得られないことを挙げている。検索インデックスに探しているサイトが登録されていないと、どうしても検索にかからない。各種ランキングについても、「このランキングは絶対違う、おかしい」と思うユーザーがいてもそれをフィードバックしてもらう仕組みがない。このほか、検索結果がたくさん出てきてしまってどうしたらいいかわからないというユーザーに対して、それをどうフィルタリングすれば望んでいる答えが得られるようになるサポートする機能がない点も挙げた。
こうした反省点を、井上氏は「Find.Use.Share.Expandというヤフーの世界的なサーチビジョンがあるが、これを元に解決していきたい」と考えている。その方向性としては、「情報を探すというステージから個人の知識や知恵を共有するというステージに持っていく」とした。具体的にはパーソナルサーチ、ソーシャルサーチを提供していく。ログインが必須になるサービスだが、ユーザーがログインすることで自分の情報を管理できるようにする。たとえば、カテゴリー検索で12月に導入するように、昔いつどこのサイトにいったというのを憶えておける、あるいはインデックスに、明確に自分はこのページを検索したいから保存しておくといったことができるようにすることだ。
これをもう一段階進めると、友達や仲間と自分が保存したりコメントを付けたり、タグを付けたりした情報を他の人も使えるようにする。井上氏は「具体的にいえば、たとえば検索ワードを入力しなくてもタグの一覧を何回かクリックするだけで目的の結果にたどり着けるということを実現することだ」とした。そして、「これを実現するためには、単に検索という仕組みだけでなく、ソーシャルネットワークの機能が必要になる」と言う。
これを具現したお手本が、米国のYahoo!が提供している「My Web2.0」というサービスだ。井上氏は、「これでできるようになったことは、検索履歴が保存できるようになってRecoveryの部分がかなりよくなった。それからYSTのインデックスに組み込まれていないページが検索できる可能性がある」と見ている。ユーザーがアクセス数の低いきわめてニッチなブログやウェブページを見て、そのユーザーがページを保存しておく。すると、そのページがYSTの検索対象になる(インデックス化)には時間がかかるかもしれないが、信頼できるユーザーの仲間たちが保存しているページだけを検索することで、目的の情報が見つけやすくなる可能性があるというわけだ。つまり、信頼できるソーシャルネットワークによってtagging(folksonomy、タグ付けされ分類されていることにより、たとえばタグ一覧の中を数回クリックするだけで、目的の情報に辿りつけるというわけだ。
井上氏は、「ヤフーはマーケットシェアもあるし、ログインユーザー数も非常に多いので、こうしたパーソナルサーチやソーシャルサーチでも大きくリードできるのではないか」と考えている。
このように、自己反省や危機意識を持ちながら、今後も成長を続けるために新しいヤフー2.0の考え方を集約した言葉が「ソーシャルメディア」だ。井上氏は「Web2.0の流れがある中で、いまインターネットがインターネット自身を考え直している。これと同じで、ヤフーもヤフーのあり方を考え直しており、それを『ソーシャルメディア』という言葉で表現した」と語る。ソーシャルメディアは、ヤフーが考え出した言葉で、主に以下の3つの要素がある。
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