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レッドハットCEO:「マイクロソフトもノベルも身が縮むほど恐い」

Stephen Shankland (CNET News.com)2004年08月12日 10時00分
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 Red Hat会長兼最高経営責任者(CEO)のMatthew Szulikは、一進一退の日々を送っている。

 Linuxを導入すれば、知的財産権を侵害することになる--顧客に対するこうしたSCO Groupの脅しも、Linuxベンダー大手Red Hatの業績に水を差すことはできなかったようだ。SCOがそれ相応の痛手を被っているのに対し、Red HatはRed Hat Enterprise Linuxのライセンスを何万件も販売することに成功した。

 しかし、悪いニュースもある。新たに数千件の特許を申請するという強敵Microsoftの発表はその一つだ。この通りにことが進めば、Linuxに組み込むことのできる技術に制約が出る可能性があることをSzulikは知っている。同時に、Red Hatは過去3年分の決算内容を修正したことで、投資家に訴えられている。さらに、52週にわたって29ドル以上を維持していた同社の株価は、10ドル台の後半にまで下落した。

 Szulikは米国時間3日に、LinuxWorld Conference and Expoで開幕基調講演を行った。CNET News.comは講演後、Szulikにインタビューを行い、Red Hatとオープンソースビジネスについてさまざまな話を聞いた。

--Microsoftが大胆な値下げ戦略を進めていますが、その影響を感じていますか。

 これは以前からあった問題です。特に変わったことはありません。以前よりも目に付くようになっただけでしょう。

--Microsoftが実施した一連のLinux比較調査についてどう思いますか。

 これらの調査を見たときは、思わず首をひねりました・・・これが米国を代表する企業のすることだろうかとね。Linuxカーネルを設計したのは本当にLinus Torvaldsなのかを調べたり、「どっちがましか」といった低レベルのセキュリティ調査に資金を提供したり、SCO Groupに資金を供与したり・・・。

 われわれの知る限り、顧客が望んでいるのはそんなものではありません。顧客が聞きたがっているのは説得力のあるビジョンです。製品とサービスの質、財務状況、そしてビジネスの持続可能性です。

--そうしたビジョンを語れば、契約を獲得できるものでしょうか。正直なところ、Linuxを導入している企業はまだ多数派とはいえないのでは。

 改良の余地は大いにあるでしょう。しかし、Linuxの躍進を牽引してきたのは、Unixからの移植組だということを忘れないでください。このプロセス、つまりプロプライエタリアプリケーションや自社開発のアプリケーションを、IntelやAMDの32/64ビット環境に移植するプロセスはまだ完了していません。最新のデータベースを動かすことのできる、メモリ管理機能を備えた高品質のLinux OSが登場したのはわずか1年前のことです。変化が始まってから、それほど時間はたっていないのです。

--レガシーシステムのない環境についてはどうですか。

 面白くなっています。アジア諸国、途上国、ロシア、中国、インド、スリランカ--こうした国の政府機関はシステム構築に取り組み始めたばかりです。担当者は口を揃えて「うちには移植しなければならないメインフレームはない」といいますよ。

 こうした国が思い切った選択ができるのはこのためです。安ければいいという理由で、Linuxを選んでいるわけではありません。

--海外市場にはどれくらい力を入れているのですか。

 財務状況が許す限り、積極的に取り組んでいます。今年1月にはインドを訪問し、大統領と個人的にお会いしました。皮肉だったのは、大統領がRed Hatやオープンソースソフトウェアに詳しかったことです。大統領は90年代初頭からオープンソースソフトウェアを推進しており、インドの教育制度を改善するために、オープンソースソフトウェアを利用していきたいということでした。これがパイを大きくする秘訣です。

--一部の国にとって、米国など市場で提供されるRed Hat製品の価格は安いとはいえません。こうした市場では特別な料金体系を設けているのですか、それとも別バージョンのLinuxを提供しているのですか。

 競合他社はRed Hat製品は高いと触れ回るかもしれませんが、ここにはアップグレード料金や保守料金も含まれています。他社はうまいことをいって顧客を誤解させているのです。

--結局、Red Hatのサブスクリプション料は途上国の方が安いのですか。

 市場や状況によって異なりますが、競争力のある価格設定をしているつもりです。

--Microsoftは外国政府と良好な関係を築こうと奮闘しています。また、一部の国の政府は国産バージョンのLinuxを採用するようになっていますね。

 もちろん、われわれも海外部門の強化に取り組んでいます。たとえば、アジア太平洋事業の新しい責任者は、IBMでアジア太平洋地域のセールスディレクターを務めていた人物です。一口に海外市場といっても、すべての国に同じ戦略を適用できるわけではありません。たとえば、韓国市場にはUnix独占、脱Windowsという特徴があります。韓国市場は当然、中国市場とは違いますし、当然、日本市場とも違います。こうした市場にはその国に特化した戦略で取り組まなければなりません。たとえば、マレーシア市場のビジネスチャンスは、日本市場のビジネスチャンスとはまったく異質のものでしょう。いずれにしても、われわれはまだ若い成長企業ですから、どの市場も手強い。ローカリゼーション、文化、価格設定など、問題は山積しています。

--多少は、反米主義の恩恵に浴していると思いますか。Red Hatは米国の企業ですが、御社のロゴは世界中で認知されています。

 反米主義は、コンピューティングソフトウェアよりも複雑な問題です。オープンソースソフトウェアが海外で受け入れられた理由はいろいろとありますが、特に重要で普遍的なものが2つあります。1つは、顧客が既存のソフトウェアに変わる選択肢を必要としていたこと、もう1つは、ソフトウェアを自由に利用し、訴えられる危険や恐怖にさらされることなく、コードを改変できる柔軟性を求めていたことです。

 オープンソースの導入によって、海外市場ではユーザーの低年齢化が進み、これまでよりもずっと若い人々が科学技術やコンピュータサイエンスを学び、習得するようになっています。現実的なところでは、諸外国がオープンソースを受け入れた理由としてこういった要因もあると思います。

--セキュリティについてお聞きします。来年はLinuxを狙った攻撃がさらに増えると思いますか。

 Linuxは急速に進化しており、1年前に比べると、はるかに堅牢で安全な環境になりました。しかし、「Linuxの守りは鉄壁だ」などといって、(ハッカーの)総攻撃を誘うような真似はしたくありません。

--Red Hatとオープンソース運動が直面している大きな課題とは。

 今後は特許や著作権の分野で、新しい課題や問題が出てくると思います。

--具体的にいうと?

 ご存じの通り、Red Hatとオープンソースコミュニティはしばらく前から、特許の認定プロセスの見直しや監視を求めてきました。現在の特許法が今後も適用されることはわれわれの望むところではありません。米国に関する限り、現在の著作権は的を外していると思います。

--どのような修正が必要なのでしょうか。

 もっとも根本的なのは、ソフトウェア提出時にソースコードを全面開示すべきだということです。特許を申請するときは・・・現状、特許の対象となるソースコードあるいは知的財産の一部を提供すればよく、すべてを開示する必要はありません・・・でも、登録商標や企業秘密を守りたいなら、企業秘密として法的保護を受ければいいのです。しかし、今は著作権の問題と企業秘密の保護が混同されているきらいがあります。

 現在、政府は優秀なスタッフを投入して、こうした積年の課題に取り組んでいることと思います。世界経済の大部分がアナログからデジタルへ移行しつつあるというのに、(著作権関連訴訟の)判決のなかには、100年前のJohn Phillips Souza(米国の作曲家)の時代に遡るものもある。変化の時が来たのです。

--そう結論するにあたって、参考にした国があれば教えてください。

 重要なのは公の議論を喚起しつづけることです。こうした論議はまだ本格化していません。ブッシュ大統領は大統領就任時、米国(特許商標局)の抜本的な改革に取り組み、グローバルスタンダードを定めるといいました。公的な議論の場では、Red Hatのような小さな企業にも、強大な政治的影響力を持つ大企業と同等の発言の機会を認めてもらいたいと思います。

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