マイケル・ローディング氏がマイクロソフトの代表執行役社長に就任して1年が経過した。8月10日、同社の新年度経営方針説明会に立ったローディング氏はこの1年をふり返り、マイクロソフトの好調さをアピールするとともに、今後の課題について語った。
ローディング氏は、先日米国にて発表された決算結果について触れ、「売上も営業利益も昨年を上回り、日本においてもすべての分野で好調な実績を残すことができた」と述べる。国内では富士通とのミッションクリティカル領域における戦略的提携や、
マイクロソフト代表執行役社長のマイケル・ローディング氏 |
順調なビジネスをアピールするローディング氏だが、課題がないわけではない。同氏は、マイクロソフトの最大の課題は、やはりセキュリティだという。これまでもセキュリティに対する取り組みを強化し、進展はあったとしながらも、「これからもセキュリティは最重要課題だ」とローディング氏はいう。リリース間近と言われるWindows XP SP2についても、「継続的にセキュリティを提供するものになる」としている。
またローディング氏は、もう一点の課題である競合関係についても現状を説明した。なかでもLinuxとの関係について、「技術が登場してから数年前までは、感情論ばかりが盛り上がり、事実や現実に基づいた議論はなされなかった。それが、昨年からは機能や特徴に目が向けられるようになり、最近ではその機能がどういう価値をもたらすのか、またどのようなサポートがなされているのかといったことについて語られるようになった」と述べる。「われわれは、顧客にどのような価値を与えられるのかを伝えなくてはならない。感情論から離れ、第三者機関の意見も参考にして価値のあるプラットフォームを選んでほしい」(ローディング氏)
マイクロソフトは今年2月に独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査を受け、これと前後する時期にOEMベンダーとの契約から非係争条項を削除している。ただし、この条項を削除するのは、2004年8月1日から2005年7月31日までのOEM契約書行以降のみが対象で、既存の制約事項に関しては何ら進展が見られないことから、公正取引委員会は7月、同社に対し勧告を行った。この点についてローディング氏は、「公正取引委員会の主張は尊重する」としながらも、同勧告については応諾しないとしている。現行のOEMライセンスに非係争条項が盛り込まれなくなった点については、「方針が変わったのは、環境が変化したためだ。今の時代に合うよう方針を適応させた」と述べている。
ローディング氏は、同社の知的財産(IP)戦略についても説明した。同社では、IPライセンスを多く取得しているが、そのIPを製品に生かし、またパートナーとのベータプログラム実施などにより知財リスクを製品開発過程で解決するなどの方策をとることで、マイクロソフト製品を採用した顧客が第三者から知的財産の侵害で訴えられないよう責任を持つとしている。さらに、IPライセンスをパートナーに提供したり、逆に提供されたりすることで、イノベーションの促進を図るとしている。
最後にローディング氏は、マイクロソフトのミッションを「人とビジネスの価値を最大限に引き出すための支援をする」とした。さらに同氏は、「私個人(社長)としてのミッションは、顧客とパートナーの価値を最大限に引き出すこと、働きやすい会社にすること、信頼される企業市民になることだ」と述べた。
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