公正取引委員会は7月13日、Microsoft(米国本社)に対して独占禁止法(第19条「不公正な取引方法」第13項 拘束条件付取引)に違反するとして排除勧告を行った。
Microsoftは、PCへのWindowsオペレーティングシステムのOEM供給に際して、コンシューマーPC市場におけるOSの独占的地位を利用して、Microsoftを相手にしてWindowsによる特許侵害を理由とする訴訟を提起しないとする非係争条項(non-assertion of patents provision)を含む契約を2002年以降全OEMベンダーと結んでいた。
公正取引委員会は、OEMベンダーはこの条項によりMicrosoftや他のPCベンダーが自社の技術を侵害する技術を採用しても法的に対処できない状況が発生するため、技術開発の環境が損なわれ、公正な競争が阻害されるおそれがあるとしている。OEM契約はMicrosoftがほとんどを出資するライセンス管理会社で一括管理されているため、排除勧告の対象はMicrosoftとなる。
勧告では、Microsoftに対し、(1)国内PCベンダーとの間で締結されている現行のOEM契約書の非係争条項に関する規定を破棄すること、(2)過去に国内PCベンダーとの間で締結した契約書のうち、契約終了後も存続する非係争条項に関する規定を破棄すること、(3)国内OEMベンダーに対し、非係争条項を破棄することと今後特許侵害を理由とする訴訟を提起することをWindowsのOEMライセンス契約によって妨げないことを書面で通知すること、(4)Windowsのライセンス供与にあたり、今後いかなる方法によっても特許侵害を理由とする提訴を妨げないことの4点を求めている。
Microsoftは今年2月にOEMライセンスの改変を表明しており、2004年8月1日から2005年7月31日までの期間を対象とするOEM契約書では非係争条項を削除することを決めているが、2004年7月31日までの期間を対象とした契約やそれ以前に締結された契約にはOEM契約の終了/解除後も非係争条項が存続すると規定されているため排除勧告が行われた。
今回の勧告を説明する文書では、Microsoftが1998年に出荷を開始したWindows 98にWindows Media Playerを搭載し、以後AV機能に関する技術開発を積極的に進めていることにふれ、AV機能に関する技術の開発を積極的に進めているOEMベンダーがMicrosoft側に対しOEMライセンスの変更を求めても返答を得られず、ライセンス締結を余儀なくされたことが指摘されている。
これに対し、Microsoftは同日付で声明を発表した。声明のなかで同社は「マイクロソフトは、独占禁止法その他の競争法の執行というJFTCの役割を尊重し、本年2月26日に立ち入り調査が開始されて以来、JFTCの調査には全面的な協力を行ってきました。しかしながら、今回発表されたJFTCの結論に対しては、謹んで異議を表明するとともに、法律と規則に従い、今回のJFTCの結論に対する検討をしていきたいと思います。そして、本調査が次の段階に進む過程の中で、本条項の運用を、JFTCに対してより詳細に説明するための機会が持てることを期待します。」(訳はマイクロソフトによる)としており、勧告を応諾しない旨を表明している。公正取引委員会による勧告を7月26日までに応諾しない場合には、独占禁止法に基づく審判手続きが開始される。
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