「内線電話にケータイはいかが?」--携帯電話事業者が取り組むモバイルセントレックスサービス

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年08月18日 17時00分

 携帯電話の加入者数はほぼ飽和状態にあるといわれている。電気通信事業者協会の発表によると、2004年7月末現在の携帯電話契約数は8315万件。このうち、大半は個人契約といわれている。今後、個人契約による加入者数の急激な増加が望めない各事業者は、新たな市場を求めて法人向けサービスを展開しはじめた。

 これまでも携帯電話の法人契約は存在していたが、法人で契約する場合でも、サービス内容自体は通常の携帯電話と変わらないものであった。外出の多い営業担当などに法人契約の携帯電話を持たせ、音声通話やメール、インターネット接続に利用するか、グループウェアなどの業務用アプリケーションを利用するといった、特定アプリケーションの展開にとどまっている。これらのサービスは、基本的には通常の携帯電話網を介した通信となる。

 今年になって各携帯電話事業者が注力しているのは、携帯電話を企業の内線電話として利用する、いわゆる「モバイルセントレックス」と呼ばれるサービスだ。6月にはKDDIが「OFFICE WISE」を11月30日より開始すると発表し、7月1日にはボーダフォンが「Vodafone Mobile Office」を開始した。また同じく7月にNTTドコモは、企業IP内線システム「PASSAGE DUPLE」に向けた専用FOMA/無線LANデュアル端末「N900iL」を開発したと発表している。各社のサービス概要をここでまとめてみよう。

ターゲットは大企業--KDDIのOFFICE WISE

 KDDIのOFFICE WISEは、オフィスビル内など限定された特定エリアにて、一般のau携帯端末を利用した内線通話が可能になるというもの。独自の小型アンテナを特定エリアに設置し、端末にはエリア内専用の最大11桁の番号が与えられる。既存のPBXを利用した内線電話との併用も可能で、エリア外では通常のau携帯電話端末として利用できる。

 エリア内通話にかかる料金は、月額900円の定額料金。これで内線通話はかけ放題だ。ただしこの定額料金のほか、通常のau端末として利用するための月額料金が別途必要となる。データ通信は、エリア内であっても通常のパケット料金が発生する。

 対象となるのは、au携帯電話を1000台以上契約する企業。初期費用は、1000回線規模で1000万〜5000万円としている。11月30日より東京地区からサービスを開始し、以降名古屋地区、大阪地区にも拡大する予定だという。

「内線」の対象は日本全国--ボーダフォンのVodafone Mobile Office

 ボーダフォンは、7月1日よりすでにVodafone Mobile Office(VMO)というモバイルセントレックスサービスを開始している。KDDIのサービスと同様、3G対応のボーダフォン携帯端末であれば、どの端末でも利用できる。20回線以上の法人契約が対象となっており、月額基本使用料を支払うことでグループ内の通話が無料となるサービスだ。

 月額基本使用料は2タイプに分れており、7800円の「VMOデイタイム」と8800円の「VMOオールタイム」とがある。オールタイムでは終日グループ内通話が無料となるが、デイタイム契約ではグループ内通話が無料となるのは8時から19時まで。両契約にはほかにも、一般電話への通話料や64 Kbpsでのインターネットアクセス通信料などに若干違いがある。

 グループ登録をした番号には3桁から5桁の内線番号が付与され、日本国内であれば場所を問わずにグループ内通話は無料だ。利用の電波環境や回線数によっては特別なアンテナの設置が必要となるケースもあるが、アンテナが必要でない場合、アンテナ設置のための初期費用も発生しない。「小規模な無線内線システムを導入したい場合、簡単にはじめられる」とボーダフォンではアピールしている。現在法人契約をしている端末は、そのまま同サービスに移行させることも可能だ。

無線LANとのコラボレーション--NTTドコモのPASSAGE DUPLE

 NTTドコモのPASSAGE DUPLEは、FOMA端末に無線LAN機能が搭載された専用端末で提供されるサービス。KDDIやボーダフォンのように、企業内で携帯電話通信網を利用するのではなく、このサービスでは、企業内ではIEEE802.11bの無線LANを介した通信を行う。これにより、内線電話が無料になるのはもちろん、データ通信も無料となる。外出時には通常のFOMA端末として利用することが可能だ。

 現段階でこのサービスに対応する端末はN900iLのみ。同サービスに向けて開発された専用端末だ。この専用端末には、登録した相手が会議中か外出中かといったような状態を表示するプレゼンス機能や、インスタントメッセージ機能など、社内で業務を効率的に進めるためのソリューションが用意されている。

 初期費用は、「携帯端末を300台導入する場合で約5000万円程度」(NTTドコモ広報部)という。また、社外で通常のFOMA端末として利用するため、FOMAの月額基本料金も別途必要だ。

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