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「内線電話にケータイはいかが?」--携帯電話事業者が取り組むモバイルセントレックスサービス - (page 2)

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年08月18日 17時00分
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モバイルセントレックスの元祖、PHSの価値は?

 このように、2004年前半に相次いで発表された各携帯電話事業者の法人向けモバイルセントレックスサービス。しかし、企業内線電話を無線にするというこの手のサービスは、以前からPHSベースのものがすでに提供されていた。

 PHSでモバイルセントレックスサービスを提供しているのは、NTTドコモとDDIポケットの2社だ。ドコモ広報部によると、「PHSの内線システムは、市場全体で約5万社が導入している。そのうち約半分がドコモの提供するものだ」としている。ただしDDIポケット広報部によると、「内線のみの導入で、社外に出た際に通常のPHSとして利用していない企業も多い。そのため正確な導入企業数は把握できていない」としている。

 日経マーケット・アクセスが7月9日に発表した調査結果によると、企業の内線電話システムにPHSや携帯電話機を使う企業は増加傾向にあるという。回答企業のうち、特に従業員1000人以上の大企業では導入率が既に47.5%に達している。全体でみるとこのような内線システムを導入しているのは3割だが、将来的に導入したいと考える企業は半数を超えるという結果が出た。

 この調査は3月中旬から4月上旬にかけて実施されている。先ほど概要を比較した携帯電話事業者のモバイルセントレックスサービスがはじまっていない時期であることから、この回答で導入済みと答えた企業は、PHSもしくは通信機器ベンダーが提供する企業内線システムに、独自の携帯端末を導入するといったケースだろう。この中で、内線端末をそのまま外出先に持ち出し、音声およびデータ通信が外部からも可能となるのはPHSに限られる。

 DDIポケット広報部では、新たに登場した携帯電話でのモバイルセントレックスサービスと、PHSを使う場合の違いについて、「PHSはコードレス電話と同様のシステムを利用しているため、無線内線電話としての親和性が非常に高く、基地局の設置も安価で簡単だ」としている。

 先ほどの日経マーケット・アクセスの調査では、調査対象となった企業がモバイルセントレックスサービスに求めることとして、通信方式がIPか無線LANかといったことよりも、低コストであることや内線通話が無料となることなど、コストへの関心が高いという結果も出ている。

 初期費用について、NTTドコモの提供するPHSベースのモバイルセントレックスサービスPASSAGEと、FOMAを使った同様のサービスPASSAGE DUPLEとを比較すると、「単純比較はできないが」(NTTドコモ広報部)としながらも、「PHSベースのPASSAGEの場合、初期費用は300台導入する場合で約4000万円」としている。つまり、PHSベースのサービスの方がFOMAベースのサービスより初期費用で約1000万円安価となるわけだ。外部で通常のPHS端末・FOMA端末として利用する場合の月額基本料金についても、一概にはいえないがPHSの方が安価だといえる。

 ただし、今年4月1日に電気通信事業法が改正され、市内通話サービス以外の全サービスについて、大量契約の際の契約内容が自由化されている。つまり、通信事業者とユーザー間での相対契約が可能となったわけだ。これにより、携帯電話事業者は法人顧客を獲得するために値引きを仕掛けてくる可能性もある。

携帯かPHSか

 携帯電話のモバイルセントレックスサービスは、事業者にとって法人契約を拡大するのにもってこいのサービスだ。アンテナ設置などのシステム導入を伴う場合には、長期間にわたる契約が約束されたようなもの。各社が真剣に取り組むのもうなずける。では、ユーザー企業にとってはどうなのか。モバイルセントレックスサービスとしてすでに確立された技術を持つPHSではなく、携帯電話を利用するメリットはどこにあるのだろう。

 携帯電話事業者の言い分としては、PHSに新型機種が少ないことや、携帯電話はPHSに比べて使えるアプリケーションの数が多いこと、また、PHSユーザーが減少しているため、PHSを社員に持たせても個人用に携帯電話を別途保有し、2台の端末を持ち歩かなくてはならないことなどから、普及率の高い携帯電話をモバイルセントレックスサービスに利用する方が便利だと述べる。

 しかし、法人契約した端末が各個人の利用ニーズに合致するとは限らない。特にNTTドコモのPASSAGE DUPLEの場合、現時点では対応端末は1機種のみだ。会社から与えられた端末が気に入らなかったり、個人ではプライベート用の端末もしくは電話番号を利用したい場合、結局2台の携帯端末を使い分けることになるだろう。そうなると、個人ユーザーとしては会社から与えられる端末がPHSでも携帯電話でも変わらないというのが本音ではないだろうか。

 いずれにせよ、モバイルセントレックスの導入でオフィス環境が向上することは間違いない。内線電話がコードレス化し、移動の際に社員が端末を持ち運べるようになれば、企業内外を問わず連絡がつきやすくなる。社内でレイアウト変更を行う際にも、再配線は不要だ。KDDIでは、2003年春より同社飯田橋オフィス内にて自社のモバイルセントレックスシステムを実験採用、6000台の携帯電話を配布し、1000人が同時通話可能な基地局とアンテナ設備を導入した。採用後約1年経過した今年春、227名を対象に社内アンケートを実施した結果、業務効率が向上したと感じた社員は96%に達したという。具体的なメリットとしては、外出先や移動時間でも電話やメールの対応ができることや、他人の電話を取り次ぐ時間が減少することなどがあげられている。

 7月にモバイルセントレックスサービスを開始したボーダフォンをはじめ、今年秋にはNTTドコモ、KDDIのサービスも順次開始される。PHSのモバイルセントレックスサービスも含め、今後の導入事例が注目されるところだ。

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