NECは4月28日、2003年度の連結決算を発表した。売上高は前年比4.5%増の4兆9068億円、営業利益が同51.1%増の1826億円、税引前利益が161.1%増の1605億円となったほか、当期純利益が同656億円改善し、410億円の黒字となった。同社の純利益が黒字になったのは2000年度以来の2年ぶりのこと。
主力のITソリューション事業は先行投資プロジェクトの増加によって営業利益が前年割れしたが、構造改革を進めたネットワークソリューション事業とエレクトロンデバイス事業が好調で業績を支えた。
ITソリューション事業は特にSI/サービス事業が足を引っ張った。売上高は前年比0.8%増の2兆988億円となったが、営業利益は同13.2%減の917億円にとどまった。これは地上デジタル放送の開始に伴うシステムの納入や、Javaを全面採用した基幹系システムの再構築などにおいて、新技術に対応するためのコストがかさんだため。NEC代表取締役社長の金杉明信氏によると、地上デジタル放送システムでは東京・名古屋・大阪地域で70%のシェアを取ったという。「要求仕様が明確でないままスタートしたが、(地上デジタル放送の開始に)なんとか間に合わせた」(金杉氏)。2004年度はこれらのノウハウを地方局などに展開し、営業利益を改善するとしている。
NEC代表取締役社長の金杉明信氏 |
ネットワークソリューション事業は、携帯電話端末事業が売上高前年比66%増となったほか、生産拠点の集約や製品の絞り込みを行ったブロードバンド事業の業績が改善し、増収増益となった。ネットワークソリューション事業の売上高は前年比12.6%増の1兆7757億円、営業利益は同197.9%増の678億円となっている。
エレクトロンデバイス事業はNECエレクトロニクスのシステムLSIが好調に推移した。売上高は回路基盤やカーエレクトロニクス等の事業が連結対象外になったため、前年比0.5%減の9321億円となったが、営業利益は同565億円改善し542億円の黒字に転換した。
2年ぶりの黒字化につながったNECの変化について問われた金杉氏は、「グローバル化に伴い、コア事業とノンコア事業を分け、コア事業に集中する集中と選択を行ってきた。また、財務体質の改善を第1に置くというのは過去になかったことだ。これを全社を挙げて取り組んだことが大きい」とした。
「IBMにない特徴を持つソリューションプロバイダーに」
2004年度の業績については、国内IT市場が回復基調にあるとして、引き続き増収増益を見込む。「大企業を中心にグローバルSCMやCRMへ投資意欲が強い。また、通信放送分野では新しいサービスのための大型システム投資が目白押しの状態だ」(金杉氏)。通信放送分野ではすでに7つのプロジェクトが内定しており、総額で1800億円程度の事業になる見込みという。
NECではITとネットワークを融合させたソリューションを自社のコアコンピタンスと定め、新たな事業機会の創出を狙う。「システムのオープン化と、ネットワークのブロードバンド化という2つのタイミングがうまく合った。IBMなどの他社にはない、特徴を持ったソリューションプロバイダになる」(金杉氏)と自信を見せる。
なかでもNECが注目するのがアジア地域だ。「ブロードバンドやモバイルというネットワークインフラに対するニーズがあり、(NECが培った)インターネットインフラベースのソリューションがそのまま通用する。アジアの台頭は、日本のITベンダーのプレゼンスを高めるチャンスだ。NECはここ数年アジアにおけるSE人員を計画的に増やしており、今後は昨年の増資で得た成長資金を投入したい」(金杉氏)として、M&Aも辞さないとの考えを示した。
マーケットの動きに対応するため、経営体制の改革も行う予定だ。新たにマーケティングユニットを金杉社長の直轄組織として新設する。これは全社のマーケティング部門として機能し、R&Dの成果をすばやく事業化に結びつけることを目的としている。金杉氏はチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)としての肩書きも持つことになるという。
2004年度の業績予想は売上高が前年比1%増の4兆9400億円、営業利益が同20.4%増の2200億円、税引前利益が同12.1%増の1800億円、当期純利益が同70.7%増の700億円としている。
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