Wireless Japan 2003の2日目となった7月17日は、NTTドコモ代表取締役社長の立川敬二氏が基調講演を行った。
立川氏はまず、今後の成長戦略において大切なことは「いかに非音声の映像やデータ通信トラフィクを開拓していくか」だと語る。立川氏によると、2002年におけるドコモの全トラフィック量のうち、音声のトラフィックが約80%、映像やデータなどの非音声分野が約20%の割合だったという。立川氏はこれを「2010年には音声を30〜20%に、非音声分野を70〜80%の割合にしていく」と目標を掲げた。
データトラフィック量を増やすためにドコモが力を注ぐのが、多くのデータを短時間でやり取りできる第3世代(3G)携帯電話のFOMAだ。FOMAはサービス開始時からしばらく契約数が伸び悩んでいたが、今年の2月頃からの契約数が伸び始め、現在56万程度の契約数があるという。「年末には100万、年度末には150万程度になるだろう」と立川氏は自信を見せる。
FOMA普及のための課題として立川氏が挙げたのは、端末、通信エリア、サービスの3つだ。
バッテリーの問題は燃料電池が解決
端末について立川氏は、「バッテリーが短い、第2世代(2G)携帯電話に比べて端末が大きいという苦情があった」と話す。端末の大きさについては現在2Gとほぼ同じくらいになってきたと話しており、現在発売されている最新型のFOMA端末は重さも110g程度と軽くなっている。今年中には100g以下の端末を出したいと立川氏は語る。
バッテリーについても、年内には連続最大待受時間が300時間以上のものを出す予定という。ただし今後、映像配信や電子決済など様々な機能が携帯で利用されるようになれば、ますますバッテリーの問題が重要になる。そこで立川氏が目をつけているのが燃料電池だ。「燃料電池であれば、電池が無くなっても燃料を注ぎ足せばいい。つまり、無限に電池があることになる」(立川氏)。燃料電池を搭載した端末の提供時期については、「2005年頃には何とかなるというメーカーの声もある」と期待を寄せた。
人口カバー率より屋内の基地局数が課題
FOMAのサービスエリアについては、2003年6月に人口カバー率93%を達成、2004年3月にはこれを99%にまで高めていくと立川氏は語っており、順調にエリアを拡大しているように見える。しかし立川氏によると、ドコモが想定していなかった落とし穴があったという。
「3Gの高速広帯域を歩きながら利用する人は少ない。外で通信を行うのではなく、会社や家の中で行うことのほうが多いようだ。そのため、屋内のカバーが重要だと気がついた」(立川氏)。
立川氏によると、2003年3月時点でビル内にFOMAの基地局を設置しているところはわずか140カ所。そのため現在は屋内の基地局設置を急いでいるといい、2004年3月までには1600カ所、2005年には3000カ所にしていく計画だとした。
「“人ナビ”に需要はない」
サービスに関して立川氏が現在最も注目するのは、位置情報サービスだという。
ドコモでは、主に車の位置情報システムに力を入れていると立川氏は話す。現在ドコモではGPSを利用して車両の位置情報を把握する車両運行管理サービス「Docoです・Car」を展開している。ライバルのKDDIは人間の位置情報を利用して目的地まで誘導する、言わば“人ナビ”サービスに力を入れているが、立川氏は「人間のナビゲーションサービスはかなり前に行ったが、需要が少なかった」とライバルの戦略を一蹴した。立川氏によると、修学旅行の班行動で、目的地に着くためのナビゲーションとして利用されるのが一番多かったという。
ドコモでは人間の位置情報を他のサービスと組み合わせて提供する考えだ。「自分の位置情報を把握するだけではもったいない。第3者が把握できるようになれば、徘徊老人やペットの追跡ができる」(立川氏)。さらに「徘徊老人にはセンサーをつけたら予防保健的なものにも使えるのではないか。脈拍や血圧などを利用者が意識することなく簡単に計測し、異常を感知したときに警告を送るといった使い方と組み合わせたらどうか」と話し、様々なサービスを考えていることを明らかにした。
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