7月16日に行われたWireless Japan 2003の基調講演では、KDDIの小野寺社長に引き続き、J-フォン代表執行役社長兼CEOのダリル E.グリーン氏が、今後の第3世代(3G)携帯電話サービスの戦略を語った。
J-フォンが3Gサービスに参入したのは2002年12月。3Gの標準規格である3GPPに準拠しており、世界で最も普及しているGSM方式に対応している点が特徴だ。
3Gのメリットとしてグリーン氏は、世界規模でネットワーク設備や端末が利用できるため、スケールメリットが出せる点を挙げる。PDCではネットワーク設備や端末が国内でしか利用できないため、製造コストが割高になるとグリーン氏は言う。特にJ-フォンではネットワーク設備をエリクソン1社に委託しているため、「価格交渉が難しく、またエリクソンにとってもJ-フォン独自の端末を作るためコストがかかる」(グリーン氏)。世界標準に準拠していればスケールメリットが生まれ、低価格で端末を提供できるとグリーン氏は強調した。
J-フォン代表執行役社長兼CEOのダリル E.グリーン氏 | |
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グリーン氏は日本で現在普及している第2世代のPDCについて、「鎖国のようなもの」と例える。PDCは日本独自の通信方式であるため、利用が日本国内に限定されるからだ。グリーン氏は「江戸時代は世界でも非常に進んだ文化を持っていたが続かなかった」(グリーン氏)と話し、世界標準の重要性を唱えた。
3Gなら5分以上の動画が送れる
J-フォンが3Gに移行するもう1つの理由が、利用できる周波数の容量が限られていること。第2世代(2G)携帯電話では、NTTドコモに33MHz、KDDIに23MHz割り当てられていたが、J-フォンには10MHzしか割り当てられていなかった。「そのため回線が混雑しやすく、サービスの成長が難しかった」(グリーン氏)。しかし3Gでは各社に20GHzずつ割り当てられているため、今までできなかったさまざまなサービスが可能になるとグリーン氏は語る。
これにより写メールでは現在の20倍以上の重さの画像ファイルが送信できるほか、動画メールのムービー写メールでは現在5〜10秒程度の動画が5分以上の長さになる、動画のフレーム数が上げられるといったことが考えられるという。
顧客に安心感を与えるような料金体系が必要
データ量が多くなる3Gサービスで利用者が気になるのは、やはりパケット料金だろう。J-フォンは3G普及にむけ、他社とは違う課金体系を考えているようだ。詳しい話は「戦略上の問題に関わる」として明らかにしなかったが、グリーン氏は「パケットという概念は利用者にわかりにくい」と指摘。「顧客に安心感を与えるような料金体系でなければならない。ウェブサイトを見るたびにいくらかかっただろうかと考えなくていいような料金体系にする」と話す。また、回線が混んでいる昼間の時間帯はデータ通信料を高く設定し、オフピークの夜間には料金を下げることも考えているという。
グリーン氏は3Gの課題として、通信エリアの問題を上げる。基地局が少ないため、まだエリアが限られているのが現状だ。ほかにもソフトウェアのバグによって電話が途中で切れる、チップセットが安定していないといった問題があるという。
3Gの普及の時期についてグリーン氏は2Gが誕生してから普及まで10年以上かかったことを挙げ、「3Gの普及にもある程度の時間が必要」と慎重な姿勢を示した。
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