会場との質疑応答コーナーでは、大手企業とどう戦うのかについての質問が出た。これに対し内藤氏は、「Googleはさまざまなサービスを提供しているが、その中で5つ以上のサービスを利用しているユーザーはあまりいない」と指摘する。「インターネット上のサービスは、例えば先ほど例に挙げたFlickrやdel.icio.us、そして日本のSNSで言えば『mixi』など、大手かどうかよりも、各分野に特化した企業が、その分野で突き抜けたサービスを提供している」と内藤氏。
大手には優れた技術者が集まりやすいことも事実だが、内藤氏は「突き抜けたサービスを提供するには、技術力よりも『自分だったらこのサービスを1日中でも使っていたい』と思えるサービスが作れるかどうかというところにある」と話す。その上で「今年は日本発のサービスをグローバル化し、全世界の人に使ってもらえるようなサービスを作りたい」とした。
ただし、内藤氏は大手のサービスを認めていないわけではない。同氏が、Web 2.0的なサービスの中で、ビジネスとして一番成功していると感じているのは「Yahoo!オークション」だという。
「Yahoo!オークションでは、売りたい物を集める仕組みと買いたい人が集まる仕組みがうまくできあがっている。それに対して出品料や販売手数料などの課金を行うことで、ビジネスが成り立っている。仕組みを考えた上でサービスを構築し、そこに大多数のユーザーが集まれば、本当に利益率の高いモデルになる」と内藤氏は述べ、ユーザー参加型のサービスがビジネスとして成り立つ例を挙げた。
さらに会場からは、ベンチャー企業がIPOを目指すべきなのかどうかについても質問が上がった。内藤氏は、「単に自分が使いたいサービスを作ってみた、という感覚で始めた人たちは、サービスが運営できるだけの資金と自分たちの給料、それにプラスアルファがあれば良く、特にIPOする必要はない」というが、同時に「初期段階でビジネス面を考えずに作ったサービスがあまりにも多い」と指摘する。
技術畑の出身ではなく、「ビジネスがとても好き」という内藤氏は、常にビジネスありきでサービスを考えるため、「最初の段階で常にビジネスの仕組みを考えている。そのため2005年度の営業利益率も37%程度と高かった」としている。
ビジネスインキュベーターの西川氏も、この点については意見を述べた。内藤氏がプレゼンテーションでも触れたFlickrやdel.icio.usのように、最近ではIPO以外に、大手によるベンチャーのM&Aも主流となりつつあることを指摘した上で、「当たり前のことだが、外部資金を投入した企業であれば何らかの形でエグジットを求められるのが宿命だ。その中でIPOかM&Aかとなるが、まずIPOの場合は売上等の必要条件を満たしていなければ実現できない。IPOの条件を満たした上でIPOするかどうかは、投資家と経営者の考え方次第だろう」とした。
この点で西川氏が現在注目している企業は、はてなだ。「はてなは、外部資本は一部しか入っていないが、注目度が非常に高い。非公開企業のため売上等も明らかにされていないが、(代表取締役の)近藤淳也氏はIPOを目指していないように見受けられる。今後そのはてながどうなっていくのか、とても関心がある」と西川氏は述べた。
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