今回はモバイルインターネットの収益モデルについて考察を加えたい。モバイルに限らず、インターネットの収益モデルは「ユーザー課金ビジネス」「広告ビジネス」「物販ビジネス」の3つに大別できると考えている。多くのビジネスはその延長線上か、コンビネーション(2つないしは3つの要素を掛け合わせた形)で存在する。なお、ここでは企業などのプロモーションサイトも広告ビジネスの一環ととらえて考えている。
これらの分野について、今後のマーケット規模の予測はいくつかの企業が出している。例えば、野村総合研究所は、ユーザー課金のモバイルコンテンツ市場規模が2007年度の3530億円から2011年度には3864億円になると予測している。
また、電通総研の試算では、モバイルインターネット広告市場規模は2011年に1284億円になるという。ユーザー課金ビジネスと広告ビジネスを合わせると2011年に約5000億円規模のマーケットを形成する試算となっている。
この予測値が間違ってないと思われる論拠は、ミクロな視点で見たユーザーのお小遣いの分量である。
例として音楽マーケットを見てみよう。日本レコード協会の2005年度の調査によると、1カ月あたりに1人が支払う音楽費用は3000円程度(CD1枚分)で、それまでの数年間大幅には変わっていない。限られたお小遣いの中で音楽を楽しんでいることがうかがえる。
さらに2006年度の日本レコード協会の調査によれば、CDの購入率が減少し、代わりに有料音楽配信サービスの利用率が伸びているという。このことを考えると、ユーザーは1カ月にかけられる音楽費用3000円の中で、CD(シングル)を買う代わりに着うた(フル)等のデジタルコンテンツを楽しんでいると考えられる。
携帯電話の課金ビジネスも同じと考えられる。1カ月に携帯電話に対してかけられる費用はほぼ限界に来ており、ここを変えられない限り課金マーケットがこれ以上急成長するのは難しい。
よって、今後のモバイルインターネットビジネスでは、ユーザー課金が主流であった考え方を改め、ユーザー利用負担なしの無料ビジネスへドラスティックに変換することが求められている。基本的に無料で楽しめる一般サイトが隆盛している現状もこういったユーザーニーズに合致したためだと考えられる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」